臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
首を傾げながらもデスクに戻り、決済書類をサクサク仕分けていたら、終業間近に、コツンとガラスに何かぶつかる音がしたから顔を上げる。

「西澤さん?」

私をそう呼ぶその人は、入院療養中のはずの野村さん。

そしてその隣りには、何を考えてるかわからない笑顔の羽柴さんが立っていた。

「野村さん! 退院されたんですか!?」

驚いて立ち上がった私と、誰よりも驚いた顔をしている野村さん。

「うわぁ。お久しぶりです〜。もう体調はよろしいんですか?」

パタパタと近づいたら、野村さんは驚いた表情を柔和な笑顔に変えた。

「はい。リハビリもほぼ終わりまして、なんとか杖無しでも歩けるくらいにはなりました」

あ。そう言えば事故に遭われたんだった。

「お怪我はいかがです? ああ、とにかくお座りになって下さい」

「足をやっちゃってね。もうほとんどいいんだよ。それにしても、羽柴さんから、臨時で専任つけたって聞いていたけど、まさか西澤さんだったなんて……」

「まずは座って下さい。病み上がりじゃないですか」

ぐいぐいソファに座らせるけど、野村さんは他の事が気になるみたいで、私の顔と、執務室のドアを交互に見ている。

「その……大丈夫だった?」

「はい?」

……それは一体、何を心配しての大丈夫だ?

軽く目を瞠って野村さんを見返すと、彼は少しだけ安心したように息をついた。
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