臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「そうなんだがな……たまに息抜きさせろ。社長になってから気兼ねなく飲めたのは、この間の夜くらいだったんだ」

それは……いろいろあった夜のことだよね。

思い出すのは、常連のおじさんと意気投合していた社長の姿だ。

「野村さんを連れて下町酒場はいかがなものでしょう?」

ダンディ野村さんに似合わないなぁ。
スーツ脱いでくれたら大丈夫な気もするけど。

「俺は下町じゃなくていいぞ。気兼ねしないメンツで飲みたいだけだ」

「社長に気兼ねしない人は……かなり限られていると思うんですが」

「お前と野村は気にしないだろ?」

私をそのメンツに入れるんじゃない。

思わず凝視すると、何故か社長はニヤリと笑った。

「だいたい初っ端からぶっ飛んでたじゃねぇか。確かにお前は弱音は吐かなかったよな。暴言はかなりの勢いで吐いていたが」

「失礼ですね。そんなに暴言吐いてませんよ。それより、ちゃんと休憩なさって下さい。野村さんには予定を伺っておきますので」

片方の眉が上がって、それからコーヒーカップとマドレーヌを見下ろした。

「……常々思っていんたが。お前のポケットはいつも菓子が入っているのか?」

「流石にいつもは引き出しに入ってますよ」

「……お前はそんなもんを引き出しに入れてるのかよ」

軽く驚いた顔をされてるけど、これって結構、普通の事だよ。

曖昧に微笑みながら退出して……。

どうしようかなぁと考える。いきなり飲み会を言われても困るよね。
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