臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
ジト目で見られてもどうすれって言うのよ。

「だいたい“復帰祝い”だとか“慰労会”だとか、理由をつけたとしても、要は“気兼ねなく飲みたい”だけなのでしょう?」

「まぁ……そうなんだけどな」

困ったように指先で鼻の頭をかいている社長に苦笑した。

「でしたら、ごちゃごちゃ言わずに誘えば良いでじゃないですか」

「お前には俺は言われたくない! だいたい普通に誘っても誘われないだろうが」

じろっと睨んでから、彼は執務室に勢い良く戻って行く。

バン!と閉められたドアに身体を固くしていたら、背後で野村さんが忍び笑いをもらしているから振り向いた。

「なんでしょうか……?」

「見るからに明らかだったけど。そうか……苦労するねぇ」

「え……? まぁ、そうですね?」

よくわからないけれど答えてみたら、野村さんに“やれやれ”とでも言うように溜め息をつかれる。

「僕は予定がないですよ。後は社長に“気兼ねなく接する事が出来る”人は、飯村副社長親子さんと、会長と羽柴さんくらいですかね」

「あ。ありがとうございます。でも社長が素で接する事が出来る人って、本当に少ないんですね〜」

「うん。それだけに貴重なんだけれどね……」

デスクに戻って内線電話を取る私に、何故か野村さんは生暖かい視線で見守ってくれていた。




< 205 / 255 >

この作品をシェア

pagetop