臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「結果、お酌係のような気がするんですが」

一番奥の席に社長。社長の隣りに私。私の隣りに野村さん。

そして社長の目の前に副社長。その隣りに詩織、飯村さん、羽柴さんとなっている。

……まぁ、いいか。

「今、ジョッキで頼んだだろ。で、何を食うんだ?」

メニューを広げてくれたから、隣りに座りながら覗き込む。

「お野菜食べたいです、お野菜」

「カルパッチョでいいか? サラダはそんなに無いなぁ」

「あ。でもここタコワサありますよ。タコワサ」

「それだと日本酒飲みたくなるだろうが」

「どうせ締めに飲むんでしょうに」

「おい、そこ。二人の世界に入るな」

副社長にからかうように言われて、同時にメニューから顔を上げ、同時に顔を見合わせる。


……これは、いかん。

ニコリと作り笑いを浮かべると、社長は微かに目を細めた。


「なんだよ」

「いえ。別に」

「本当に仲が良いんだねぇ」

目を丸くしている野村さんを振り返り、ぶんぶんと首を振る。

「違います〜。普通です普通!」

「社長に普通にしてるって事が、すでに美和は異常なんだけどね。そういうとこ、本当にマイペースだよ」

目の前の詩織が呟いて、両隣りの飯村親子が吹き出した。

「詩織のセリフじゃないから! あんたもマイペースじゃないか!」

「いやぁね。私は我が道を行ってるだけだからね」

「つまり、成田と美和は似たもの同士ってことだろ? なかなか興味深いよな」

最後に感心したような社長をじろっと睨んだら、涼しいニヤリが返ってきた。
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