臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
……いかん。ニヤリ笑いも萌えるようになってきたんじゃない?

「まぁ、社員同士仲が良いのはいいことだろ。副社長たちの時代は役員同士も仲良かったんでしょう?」

言いながら、社長は最後に副社長を見る。

「ん〜? 一部はそうでもなかったぞ。特に専務に近づく輩は社長に睨まれていたしな」

社長と副社長の会話に反応したのは野村さんと羽柴さんだ。

「あれは思い出したくないですね」

「ああ。野村さんは目の敵にされていたねぇ」

呑気に会話しているのはおじ様達だらけだから、きっと社長のお父様の時代の事なんだろうなぁ。

「でも、野村さんが誰かに目の敵にされていたんですか?」

こんなのんびりおじ様を、目の敵にする人がいるの?

「うん。僕は専務秘書だったしね」

「専務付きになった秘書の女の子達は、何故か数ヶ月くらいで寿退職していたからねぇ。専務付きになると“婚期が近づく”なんてジンクスもあったよ」

野村さんと羽柴さんがカラカラ笑いながら頷いている。

それはそれで凄い……。

「どんな都市伝説だよ……」

社長の小さな呟きは、きっと私にしか聞こえなかったと思う。

そうしているうちに飲み物が届いて、各々食べたい物を選んで勝手に注文し始める。

考えてみれば、メンバーうち3人は東野一族で、そのうち2人は海千山千の時代を共にした秘書課の古株。

私と詩織がちょっと浮いている気がするんですが。
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