臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
そして思い出したのは、昔々、小さな頃、どこで見たのかは忘れてしまったけれど、大きな時計塔のたくさんの歯車たち。

大きいのもあれば小さいのもあって、規則正しく噛み合わさって時間を刻んでいた。

歯車の動きが悪くなれば油を注して、ゆっくりとまた動き出す。

噛み合わない歯車はそもそも取り付けられる事はないし、壊れてしまった歯車は外されて……。

噛み合うように、合わせるように作られて、他人の力に巻き込まれて動き出し、また自らが他の歯車を巻き込んでいく。

「西澤さん?」

羽柴さんに呼ばれて、我に返った。

「あ。はい!」

「君はたまに、自分の世界に瞬時に入っちゃうよね〜?」

呆れたように言われて、じわじわ恥ずかしくなってくる。

「すみません。えーと……」

「うん。じゃあ仕事に戻ろうか」

促されて立ち上がると、秘書課に戻って仕事に取り掛かった。

澄ました顔でデスクに向かい、パソコンを開いてから椅子に座る。
メールが来ていたからそれを開いて……読むふりをしながら、頭を抱えそうになった。


なんかもう、色々と恥ずかしいんですけど……!

詩織以外の人に、社長を眺めていたのがバレていたとか。
もしかして“地味クイーン”が、人知れずに社長を“好きなんだな”とか他の人に認識されていたんなら……。


今すぐ、穴掘って埋まりたい!


「美和。どうかした?」

詩織が声をかけてきたから首を振り、それからきちんと椅子に座り直した。

仕事しよう、仕事。
所詮、私は大きな歯車を動かす小さな歯車に過ぎないんだしさ。

たくさん頑張らなくちゃ。





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