臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
考えていたら、今度はいきなり社長が三つ編みをまとめていたクリップを取る。

「ちょ……何するんですか」

三つ編みに指を通されて、それだけでほどけていく髪。

肩に落ちてきた髪がふわりと風になびいて、慌てて押さえると社長を睨み付けた。

「……下していた方が似合いそうだ。なかなかいい」

社長はそう言いながら本当にうれしそうに微笑むから、息が止まりそうになる。

思わず喉元に手を触れて、ゆっくりと呼吸を繰り返した。

「どうした?」

「い、いいえ」

彼は眉を上げて私を見ながら、少しだけ戸惑ったように首を傾げる。

今のは無自覚か。ちょっとたちが悪い。

たちが悪い素敵な笑顔なんて聞いたことはないけど、眉目秀麗な人の笑顔ってここまで破壊力があるものなんだ。

ぎくしゃくとエスコートされるままに社長の車に乗って、次に連れていかれたのは本当にジュエリーショップだった。

最初は驚きで迎えられて、だけどすぐに、ビジッと三つ揃えのスーツ姿の男の人が出て来て店内の個室に案内されると紅茶を出された。

そこで店員さんが持ってくる小箱の中の宝石を次々と見せられて、なんだか急に現実感が遠くなっていく。

これは何の夢なんだろう。

私、こんな壮大な夢を見るような想像力があったんだろうか?

どれもこれも聞いたことがある、見たことがある程度の綺麗な宝石に実際に囲まれて、とても丁寧に接客されて……。
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