臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
ううん、まさか。私はごく普通のOLよ。

そりゃあ、いい会社の良い部署に配属されたなぁとは思うけど、こんな体験をしたいなんて思ったこともない。

ごく質素に、普通に生きていければそれでいい。

なのに……『リングはあるか?』と、そう聞いた社長に我に返った。

「それは……」

言いかけた私の足を、店員さんには見えないように蹴られる。

ダメですと言おうとしたのは見透かされているようだ。ちらりと目が合うと、視線だけで窘められた。


「どのようなものをお探しでしょう?」

目の前の店員さんがニコリと微笑みを浮かべ、白い手袋の指先をこすり合わせている。

「うん。そうだな。あまり派手なものでなくてもいい、とりあえずは……ね?」

社長がちょっぴり固い笑顔で私を見るから、それに合わせて私も貼り付けた笑みを返す。

とりあえずも何も、どんなものもお探ししてなーい!

何なんだそれは、その何か含むような言い方しないでもいいじゃないか!


……という言葉は飲み込んで。


「それは……お祝い申し上げてもよろしいのでしょうか?」

絶対にしなくてもよろしい事であります!

だけど、少し探るような店員さんに、私たちは曖昧に微笑みを返すだけだった。





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