臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
私のどこに、社長を怒らせる要素がある?

仕事は真面目にやってるよ、真面目に!

まぁまぁと入りかけた羽柴さんが、社長に静かにジロリと睨まれて笑顔のままで固まった。

うん。わかる。美形の怒った睨みは怖いよね〜?

現に、羽柴さん以外の皆は、未だに凍りついたように動かない。
そして、私もこれ以上は動けない。

業を煮やしたのか、社長がツカツカと秘書課のフロアを横切って、私の目の前に立った。

「話がある」

「……えーと。私にはないと思うのですが」

まかり間違っても、こんな大々的に乗り込まれるような話はないと思う。

流石に事業部関連の事で何かミスったとしても、こんな騒ぎを起こさないだろう。

だって社長、仕事は真面目だもん。

それはよく知ってる。

じゃあこれって仕事じゃない?

だって、さっきから社長は私の事を“美和”って呼んでる。

でも、ちょいまち。私は、すでにあなたのプライベート外の人間のはずなんで……。

「きゃわわ!」

急に変わる視界に浮遊感。

ポカンとした春日井さんと詩織の顔を見下ろし……。

え。どうして見下ろしてんの?

パニックになり掛けて、社長の肩に担ぎ上げられていることに気がついた。

「しゃ、社長!?」

「うるさい」

「た、助け……」

詩織に助けを求めかけ、歩き始めた社長に、舌を噛まないように歯を食いしばる。

「おとなしくついてこい」

いえ。あなた、間違いなく連行してるからね!?
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