臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
***



そして土曜日。秋とは思えない陽気に誘われて気分はウキウキしてる。

ドライブを誘われたから、動きやすい服装……に、しようかと思ったけれど、せっかくだからお洒落をすることにした。

買ってもらったまま、一度も着ていない着物をモチーフにしたワンピース。

黒地に華やかな花が散りばめられたワンピースに袖を通し、待ちあわせ時間ちょっと前にマンションを出る。

すでに到着して、車の外で待っていてくれたらしい彼が、私の姿を見るなり愕然とした顔をした。

「……これ、似合わない?」

「いや。似合わないものは買わない。ただな……」

小さく溜め息をついて、助手席に誘導してくれる。

「駄目なら着替えて……」

「駄目じゃない。可愛いから乗れ」

可愛いから乗れって……宥めようとしてるの? それとも褒めてるの?

とりあえず大丈夫らしいけど、なんとなく悲しい気分になって助手席に収まると、彼はドアを閉めてくれた。


車を走らせながらしばらくして、社長がポツリと呟く。

「怒るなよ。似合っていないわけじゃないんだ」

似合っていないわけじゃないなら、どうしてあなたは困ったような顔をしてるの。

「うちの家系は、やっぱり一目惚れの家系なんだな」

唐突な言葉に、眉を上げて運転席の彼を見た。
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