臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「これは本当に業務のうちなんですかね?」

呟いてみると、社長はまた書類に目を通し始めながら応接セットのソファーに座り長い脚を組む。

「そうだと言っているだろう? 実に昨日は解りやすかったじゃないか」

昨日は社長が“ベタベタしてきて苦手”だと公言している取引先の社長との会食だった。

私も一度しか見たことがないけれど、そのインパクトは強烈の一言に尽きると思う。

まず、ものすごーく甘ったるい香水を纏いながら、胸を強調するような体にフィットしすぎた白いスーツ。
その下は……キャミソールだったと思うけど。

商談の席のはずなのに社長ににじり寄ろうとするわ、書類を見る度に腕を組んで谷間を強調してくるわ、やたらと夜のお酒に誘うわ……。

私がそれはないだろうと私が書類を次々と差し出すと、ちょっとムッとしていたのも知っている。

だけど、大口の取引先でもあるから無下にも出来ない社長が、時々テーブルの下で拳を握っていたのも知っている。

それが昨日は普通のスーツを着ていた。

私の姿をチラチラとたまに見ながら、驚くぐらいスムーズに商談が進んで行っていた。


「……ああいう風に、簡単に引き下がってくださる方ばかりとは思えませんが」

「だからこそのリングだろ。特別ボーナスだとても思っておけ」
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