臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
右手につけたリングを見て溜め息を漏らす。

派手すぎず地味過ぎず可愛らしく。ルビーとダイヤがはめ込まれたファッションリング。

社長はなかなか趣味がいいんじゃないかな。

でも、これは行き過ぎだと思うんだよねー。


「野村さんが復帰して来たら、終わるんですよね?」

「まぁな。さすがに永続的には出来ないだろ。嘘はついていないんだからお前は堂々としていていい。臨時とはいえ俺の秘書であることには間違いない」

「それはそうなんですけど」


終わった時が大変そうな気がするんですけどね~。

だいたい、嘘を言っていないからといって、皆を騙している事には変わりないんだけど。

そこのところをわかっているのかな?


「小娘、コーヒー淹れてくれ」

書類から目をそらさない社長にそっと溜め息をついた。

「かしこまりました」

コーヒーを淹れて来ると、そのまま真剣に書類を見ている社長の邪魔にならない位置にカップを置く。

今は昼前か……お腹が空く頃だよね。

そう思ってからポケットの中のチョコレートクッキーを添える。

私も仕事しよう。

内線電話に邪魔さえされなければ、午前中に書類整理は終わるはずだし。

そう思いながらデスクに向かう。
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