臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「私はただの臨時秘書です。仕事をしているだけで取り入ったりしてません」

「取り入っていない人が、社長から指輪をもらうわけ? ありえないでしょう」

私だってあり得ないと思ってるよ。でも右手にはめられたリングは現実だ。

だけどね、右手ってことは考慮の範疇外なわけなのかな?


さて、この局面をどう対処しようか。

下手に動くと余計ややこしい気がするし、悩んでいたら、春日井さんの背後から険のある声が聞こえて来る。


「ちょっと、春日井さん。座らないならどっか行って。あなた邪魔」

めちゃくちゃはっきりとした声は、詩織の声だった。


「邪魔とは何よ、邪魔って」

「邪魔は邪魔でしょう? ここは社員食堂。騒動を起こしてもいい場所でもないし、秘書課の私たちがこんなところで一波乱なんてあったら、ちょっと問題じゃない?」

彼女たちの睨み合いは、春日井さんが引き下がる形ですぐに終った。

鼻を鳴らして立ち去る彼女を見送ると、詩織は私の目の前に座る。


「なんだか災難だね。あんたも」

「いやぁ。先週もいろいろと噂されていたけど、今回のはすごいねぇ」

「また他人事みたいに言って」

渋い顔をする詩織にちょっとだけ笑ったら、心の底から呆れたような視線を返される。
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