臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます！
彼女は一瞬まわりを見回してから身を乗り出してきた。

「それで、どうなってるの？」

どうなのって言われても。

「こっちが聞きたいな」

「こっちとしては……そうだな。あんたが社長と寝て秘書に取り上げられたっていうのと、社長が初めて女性秘書を使うようになって色に眩んだっていうのと、野村さんがいない寂しさを埋め合わせしているって噂と、どれが詳しく聞きたい？」


どれも聞きたくないかも。

かなり変な顔をしたんだろうけど、詩織は私の顔を見るなり吹き出した。


「その顔からすると、どれも違うってことだよね」

「私は単に仕事してるだけだもん」

「まぁ、でも、指輪を貰ったってういうのは本当そう」

彼女の視線が右手に落ちる。

「でも左手じゃないってことは……？」

「ごめん。詳しくは言えないんだ」

片手を振ると、詩織は小さく笑ってから肩を竦めた。

「そうだね。否定しないで“私は社長の秘書です”ばかり繰り返してるっていうから……たぶん何かあるんでしょう」

「それがわかっているのに、ここまで噂になるものなの？」

「人間、目新しいものには飛びつくからねぇ。しかも社長は女嫌いで有名だったわけだし、あんたも何故か週明けいきなり綺麗になって現れたら大爆発もするよ」

大爆発ねぇ？
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