臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「そういうもの?」

「そういうもの。地味クイーンが社長に開発されて開花したっていうゲスイ噂もあるけどね」

地味クイーンか……わからないでもないけど、私のことだよね。

「それはかなり下品だね。しかもオヤジ入ってる」

「ゲスイ噂の主なんてオヤジに決まってるじゃない。そもそも秘書課の春日井がああいう反応する方がおかしくない? あんたと社長が毎朝ギャーギャー言い争って出勤していたの見ているくせに」

ギャーギャーはひどい。でも、傍から見ると騒いでいたように見えるのかな?

やっぱり今後は気をつけよう。ちょっとだけ。

「それにしても……よかったじゃない? あんた社長の顔が好みだったんだから、毎朝嫌でもあのご尊顔を拝めるでしょう?」

「……全然よくないよ。好みの顔が近くにいるのは嬉しいかもしれないけど、あくまで観賞用でしょ。しかもこんな派手な噂の渦中に入ることになるなんて最悪じゃない」

「きっとそれも野村さんが復帰するまででしょ? でも……野村さんて、どうなの?」

「足の骨折って入院中だけど?」

どうなのって何?


「いやいや。もう野村さんも58歳だったじゃない。このまま早期退職って噂もあるよ」

噂ねぇ。噂は噂。なんだか渦中にいるとそれが間違いだってわかるから、安易に信じることはないかな。

今、まさに噂の中心人物としては、そう思うよ。
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