臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「それは知らない。信憑性のない噂は私は信じないことにする」

「現在進行形?」

「現在進行形」

そうして、ある意味でぐったりした昼食を終えて戻ると、応接セットのソファに座る灰色の作業服を着た白髪の男性と、その傍らに立つ社長を見つけて首を傾げた。


「おかえり」

「た、ただいま……戻りました」


社長に出迎えられるなんて秘書なんて、私ぐらいじゃない?

不思議に思いながらも座っているご年配と、立っていながら少し困ったような社長を見比べ……。


あれ? このご老人、見たことが……と、誰だか気が付いて仰け反った。

「か、会長……。すみません、席を外しておりました。今すぐお茶の用意をいたします」

「ああ。構わんでもいいよ。ちょっと孫が迷惑かけている人を見ようと思っただけだから」

迷惑……確かに大迷惑をかけられている気がするけれど、会長はどこまで知っているのかな?

事実を知っているのと事実を知らないのと一体どっち!?

思わず社長の顔を見上げると、社長は困ったように笑っているだけ。


困る―――!!


「孫に恋人ができたと思って喜んだ」

静かに話し始めた会長に、彼を見下ろしてぱちくりとする。

あ。事実を知らない方?

「だが、それが飯村の浅はかな入知恵だと聞いてがっかりだ」

……それには私も色々と思うところはありますとも。
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