臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
黙って微笑んでいる私を、じっと会長は見つめてから嘆息を漏らすと、片手を上げてガラスの向こうに消えて行った。


ちらりと社長を見上げると、社長もちょうど私を見下ろしたところで、バッチリ目が合う。


「……大事になってきましたけど?」

「ちょっと……そのようだな」

困ったような達観したような表情で、社長は鼻の頭をかいている。


「どう収集つけていくんですか?」

「まぁ。祖父さんは黙っていてくれるらしいから、このままかな? 会社内でも噂になっているくらいだから、祖父さんの耳に入るのも時間の問題だろうとは思っていたが……ここまで早いとは思ってなかった」

「無責任な事言わないでください! 私、今日は春日井さんに詰め寄られたんですよ!」

「おお。それは大変だな」

他人事のように笑う社長にプチンと切れそうになった。

いかん、相手は会社の社長。うちの会社の代表取締役だ。だけど……!


「ああ。怒ったか?」

身を屈めて近づいてきた社長の顔を思わず観賞する。

ちょっと手を伸ばせば届くような位置にある社長の顔。

秘書課を通り過ぎる時には、取り澄ました様な顔しか見てなかったけど、最近はいろんな顔を見るようになったなぁ……。

だけどどんな顔をしていても社長は整った顔をしてるよね。
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