臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「お仕事のお話は終わりましたか?」

「ああ。ざっとだが見てきた。お前は……楽しんだようだな?」

「ええ。こちらでお待ちになっていらっしゃればいいと伺いましたので、こちらで待たせていただきました」

「そう言われた?」

「そう言われましたね」


考え深げにしている社長をだけど、絶対に状況は読んでいないような気がする。

私の周りにいたおばさんたちはポカンとしているし、厨房らしきからは派手に何か物を落とすような音が……。


すると、入口で会った小太りのおじさんが、社長の姿を見つけて走り込んできた。

「社長! こんなところにいらっしゃったんですか」

「うん。うちの秘書の声がしたからな。ここも食堂か?」

「あ。はい。こちらは主に工場で働く者たちが利用するところです。こちらの方が何かと便利ですから……」

そう言ったおじさんの言葉に、おばさんたちが密かに笑う。

それに一瞬視線を向けてから、社長は私に向かって眉を上げた。


「そろそろ帰るぞ。ケーキは楽しめたか?」

「はい」

立ち上がりながらおばさんたちを振り返ると、

「また来てもいいですか?」

首を傾げる私に、彼女たちは笑って頷く。

「来ても楽しい事はないよ? 同じケーキなら、都心の方でも実は同じものが食べられるし」

「お話が楽しかったので……また来ます」

にっこり笑って手を振ると、すでに歩き出している社長の後を追った。
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