臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「……何か?」

「お前。付き合った男いないの?」

ああ。そこにびっくりしているんだ。

「おかしい事ですか?」

「今時の女にしては。肉食女子が多いと思っていたんだが」

「学生時代は勉強ばかりしていましたし。会社は合コンの場所でもありませんしね。弟たちはよく“好きな女の子”の話で盛り上がっていましたけど、いまいちよくわかりませんし」

そりゃ、私だっていい男を見ると“キャーキャー”と心の中で言っていた方だけど、それが恋愛につながるはずもなく。

あれだよ。テレビの中の芸能人なんかは、どんなにいい男でも遠い世界の人だから接点が作れるはずなんてないし。

自然と“恋愛対象外”で“観賞対象”だと思えるようになったというか。

さすがの私も、あまりにもかけ離れた世界の人とどうにかなるなんて思ってもいない。

社長だってそのうちどこかのお嬢さんとお見合い結婚でもするんだろう。

きっとそういうのがお似合いだ。


それに、いつか王子様が迎えに来てくれる……なんて夢は、小学校わがまま弟たちを世話しているうちに捨て去りましたとも。

てくてくとカップを給湯室に持っていこうとしたら、それを見ていた社長がポツリと呟いた。


「そうなのか? もったいない」
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