臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
社長は私の顔をまじまじと見て、それからどこか楽しそうにニヤリと笑う。

「ああ……こういう時は普通の女の反応するんだな、お前でも」

恐らく真っ赤になっているであろう頬を、手の甲でするっとなぞり、その手が微かに耳に触れる。

そして社長は喉の奥でくつくつと意地の悪そうな笑い声を漏らした。

「興味がないわけじゃないんだろう?」

低い声で囁かれると、背中を何かが走り抜けるような気がする。


な、なにをです?


「……とりあえず和食にしようか」

そう言うと社長はパッと身体を離し、給湯室からスタスタと出て行った。

取り残されて我に返ると、機械的にカップを洗い、泡をすべて流してから水を止める。

何だったの今の―! 心臓バクバクするし、身体の体温は急上昇するし!

なんだか“珍獣扱い”されているような気もするし!

興味って何、興味って!

あなたは“女嫌いの社長様”じゃないのー!!


とりあえず……聞かなかったフリをしよう。

それが一番最善だと思う。

カップを水切り籠に逆さに置いてハンカチで手を拭きながら給湯室を出ると、私のデスクに浅く腰かけている社長が見えた。

「デスクに座らないで下さい。お行儀悪いですよ」

「うん。俺はそんなに行儀の良い方じゃない。理解してくれ」

そんなもの理解するもんか!
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