臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「デートだ美和。運転は俺がする」

え? いきなり美和?

いや、そうじゃなくて、何?

「どうして私が社長とデートするんですか?」

「したいからに決まっているだろう」

いや、それはそうなんだろうけど。

「そうではなくて……だいたいデートする間柄じゃないでしょう?」

「間柄だろう?」

するっと右手を掴まれて、そこにあるリングを見つめた。

「こ、これは方便です。それに私がねだったわけでもないですし」

「そうだな。お前は何もねだらない。とにかく行くぞ」

社長は手を離すと、こちらを見もせずに歩きだしている。

「ちょ……! 社長!?」


慌ててバックを持って後を追うと、秘書課の照明がまだついていることに気がつく。

まだ誰かいるんだろうか?


近づいて行くと、社長が立ち止まって羽柴さんと立ち話をしているのが見えて、ふたりが私に気がついて振り向いた。


「ああ。来たな。遅いぞ」

あなたが早いんだよ。

でも、どことなく優しい口調の社長に、何故か戦慄を覚えてしまうのはどうしてなんだろう。

「じゃあ、羽柴。お前もほどほどにしておけよ」

「仕事を増やした方に、言われたくないですけど」

「そう言うな」

苦笑する羽柴さんにペコリと頭を下げて、社長と一緒にエレベーターに乗った。

「……社長が羽柴さんの仕事を増やしたんですか?」

「いや。結果として増やしたのはお前だろ?」

それはいったいなんの話だい?

「まぁ、車に乗ったら教えてやろう」
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