臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「だから……悪いな」

「え?」

急に謝られて、咄嗟に首元に手を置いた。

謝られる理由がわからない。

驚いた私に社長は苦笑する。

「祖父さんが言うように、俺がさっさと結婚でもすりゃいいんだろうが、こればかりは相手の人生もかかっていることだし」

うん? それは思わないでもないけど。

「俺自身まだ仕事にかかりきりになるのは判っている上で、適当に相手を探すのも嫌だし。お前には迷惑をかける」

「あー……」


それは確かに大迷惑なんだけどね。

……なんか社長って、根が真面目なんだなぁ。

「乗り掛かった舟ですもん。それはそれでいいです。ところで、羽柴さんの仕事が増えた理由について、車内で教えていただけませんでしたが」

「ああ。それは明日でもいいかと思ったが。まず食っていいぞ。というか食え。お前だって昼から何も食っていないんだから空腹だろう」

「あ。はい。では、いただきます」

お箸を持つと、一番先にお豆腐に手を付けた。

「それで、何が明日でいいんでしょう? 秘書室長が動くような要件って、何かありましたか?」

「大アリだろうなー」

言いながら苦笑してトマトを食べている社長を見る。

あ。あっちのトマトには緑色のものがくっついてるけど、私のにはない。

何でだろうと食べている社長を見ていたら、トマトの小皿を見比べているのに気づかれた。

「大葉がだめなんだろう? 予め伝えてある」

「あ、ああ! そうなんですか! ありがとうございます」
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