臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「いや。調べる価値はある。原材料の国産牛の市場単価が上がっているのに仕入れ価格が変わっていない。豚の方の原価は市場でも落ち着いてるもんだが、牛の仕入れの方は値上がっていてもおかしくないんだ」

し、市場単価って……。

「仕入れ業者を変えたのかと思っていたが、そういう報告書も上がっていない。仕入れについて何か相談がないかと思って出向いてみれば……」

社長は小さく溜息をついて豆腐に手を付けた。

「これ、俺より先に監査室で気づくべきことだぞ。原材料が違うなんて、改ざん事件だろうが」

「そうですけどぉ~」

何でこの人、そんな大事そうな事をサクサクと言っちゃうんだろう。

それって今の食品業界考えると大変な事だよね?

絶対に大参事につながるような事だよね!


「味がわからなくなりそう」

ポツリと呟くと、社長は真面目な顔をして頷いた。

「それは言われると思った。だから明日伝えればでいいか、と思ったんだが。まぁ、聞いてしまったものは仕方がない。お前も覚悟しておけ」

覚悟しておけって言われてもなぁ。

忙しくなりそうだとしか考えられないけど、それはそれでしょ。

「でも、いいんですか?」

「何がだ?」

「そんな大切な話を私が伺っても」

私って“信用できるかどうかも判断付かない段階”なんでしょう?
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