臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「仲良くはありません。ですが、社長が食べ物を食べている様子がないんです」

「ああ。それで君がいつも社食で二人分の食事を調達しているんだね? 結構噂になっているぞ。今度は君が妊娠してるんじゃないかって」

え。妊娠?

……確かにここ数日、ご飯を食べ終わった後にサンドイッチだとか、何か軽食をパウチしてもらっているけど。


「そんな噂になっているんですか?」

「妊娠すると食欲が進むつわりもあるって話だね」

最近食堂を使うと、食堂のおばさんがご飯を大目によそってくれるんだけど……。

もしかして、その噂は食堂のおばさん達にまで蔓延しているのかな。

思わず頭を抱えたけど、社長はいそいそと弁当の包みを開けて食べ始めていた。


「……社長って、暢気ですね」

「だから、お前に言われたくない」

「それ口癖になりつつありません?」

「言わせる奴が何を言う」

副社長がぶふっと吹き出して、慌てて社長室のドアを閉める。

「何だ。君たちは本当に付き合い始めたかね?」

「いいえ。そんな訳がないでしょう」

きっぱり否定する社長を横目で見つつ、副社長が応接セットに座ったから一礼してから首を傾げる。

「副社長……コーヒーになさいますか?」

「あ。俺も……」

「社長はほうじ茶です」

社長の呆気にとられたような顔が見えたけど、きりっと返事をしてから社長室を出た。
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