臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「春日井君よりは西澤君の方が真面目です」

「真面目なのはいい。要は新人を連れてこられても困ると言いたいだけだ」

「新人ではないです。1年は研修で総務部にいましたが、その後2年は常務の下についております」

「ついていると言っても秘書補佐だろう」

いきなり言い争い始めたし。

でも私が口を挟むような事でもないし、そもそも本人が嫌がっているんだから、あまり頑張らなくてもいいと思うよー、羽柴さん。

そう思いながら社長室の様子をくるりと見渡した。

天井はオフホワイト。壁は全面が落ち着いた色合いのマホガニー。床はダークグレイの絨毯。

ドアを開いても邪魔にならない位置に観葉植物。

さりげなく飾られた、何を描いているのかも解らない赤と青の抽象画。

一瞬、子供の落書きかと思ったけど、さすがにそれはないよね?

入るとすぐに黒革の応接セットがあって、その奥に深い色合いのピカピカした大きなデスク。

一枚ガラスの窓を背に、私を見据えている社長……。


あれ?

めちゃめちゃガン見されてる?


「なんだこのマイペースな女は」

「社長にはピッタリでしょう? 度胸もあります」

羽柴さん。女性に対して度胸は褒め言葉ではありません。

「……だいたい、新人でもないくせに、なんだその格好は」

言われて自分の姿を見下ろした。
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