臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
だってさ、峰友加里社長って言ったら老舗呉服店の“峰富士”の次女。

自身は“フェアリー・エアー”という、10代、20代の女性に大人気のアパレルメーカーを立ち上げた女社長。

雑誌の記事を鵜呑みにするなら“日本最後の大和撫子”なんて呼ばれるそそとした美人。

確か、年齢は29歳だったかな。

そんな情報を元にまじまじと社長を眺める。


微かに見える真剣な視線……。


これは本気だ。


咳払いしてから、姿勢を正す。

「ええと……申し訳ございません。状況も聞かずに断言してしまって」

「いや。気持ちはわからないでもないんだ。俺も頭の中では“嘘だろ?”状態だったから」

雑誌で知っているだけで、お話した事も無いからわからないけど、見た目は本当に大和撫子だもんねぇ。

「彼女には日本語が通じない」

「そうなんですか? では、英語でお話しすればよろしいんでしょうか?」

「いや。そういう問題ではなく、こちらが遠巻きに“お断り”入れても通じないから、ハッキリ“お断り”した所、ホテルの鍵を取り出した猛者だ」

あの大和撫子つかまえて“猛者”とは……。

「まわりの取り巻きは彼女の手足だな。思えば、いつのまにか野村と引き離される事が多かった」

難しい表情を上げ、私を見つめる視線はあくまで真剣だ。

「それからその取り巻きたちは実に効率よく他の社長や取引先を牽制してくれる。正直言って、俺が祝賀会に出席すると毎回そうなるんだ」
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