臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
ジト目で見つめられて、乾いた笑いしか出てこない。

大まかに私のせいですね。

「とにかく。パーティーは明日だが、準備は大丈夫か?」

「あ。はい。ちゃんと買っていただいたワンピースドレス着ていきます」

「うん。とりあえず明日はどこの美容室に行くんだ? 迎えにいってやる」

何だかとっても偉そうに言われたけど、その内容に首を傾げた。

「美容室? 髪は切りませんよ?」

「違う。女性は化粧とか髪とかやるだろう?」

やりますけど、自分で。

キョトンとした私に、社長がガバッと身を起こした。

「行かないつもりか?」

「行かせるつもりだったんですか?」

「今時、知人の結婚式にも使うんだろう?」

「あなたのマイ常識が一介の秘書に通じると思わないでください。だいたい私がそんな見栄っ張りに見えますか」

「見えねぇよ。見えないが……」

社長はスマホを取り出して、いきなりどこかに連絡を始めた。

「ああ。すみません。俺です」

ええ。何、なんなの?

「叔母さんの力を貸してください」

叔母さん? え。社長の叔母さんて副社長の奥さん?

パチパチ瞬きしている間に社長は会話を終え、真顔で私を見る。

「小娘。明日は9時に迎えに行く」

「えええ。パーティーは12時半からですよ? それに午前中の仕事……」

「いいから従え。いや、頼むから従って欲しい。これは武装だと思え」

ぶ、武装?

とんでもない事を言われている気がしないでもないけれど……。

真剣な社長の表情に、とりあえず頷くしかなかった。










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