引越し先のお隣は。
「ここね」
案内されたその先は、
「は??」
国語科室?
うちの学校そんなのあったんだ。
「いまクーラー付けるね」
「あ、ありがとうございます」
ま、涼しいならいいか!
「佐倉さんはそっち座ってね。先生パソコンするから」
「あの、なんであたしなんですか?」
「あ、そう。謝りたいこと。それとついでに?」
「はぁ…あ、そう。謝りたいことってなんですか?」
「いや、先生誤解してたみたいで。昨日のこと」
「昨日…」
関くん??
「告白だなんて言ってからかってごめんね。先生の事嫌いとか叫んでたけど…本当?」
「あ…」
そうだあたし、最後に先生なんか嫌いって叫んだっけ。
思わずって感じ。
「あれに深い意味は無いです…あたしもとっさで」
「そっか!」
「謝りたいことってそれだけですか?」
大したことないじゃん。
「いや、まぁ。生徒の関係に首突っ込んじゃったし」
「あたしは別に…」
「それに本当は告白なんかじゃないんでしょ?」
「え…?」
「だって昨日佐倉さん、言ってたじゃん?」
「…違いますよ。友達になってとか言われただけですから」
「友達、ね」
「で?あたしは何をすれば」
三浦先生とお話して、
なんか分かんないけど、何でも言えるような気がした。
ま、若いからか。
年あんま変わんないしね。
若いっていいなぁー
「あ、そう。夏休みの課題の丸つけ手伝って欲しい」
「丸つけ…」
「地味?」
「いや。あたし丸つけは得意」
「まじで!助かるわ」
先生はくしゃっと笑った。
まただ。この笑顔。
なんかかわいい。
「佐倉さんに頼んで良かった」
「え?」
「優秀だしね」
「…そんなんじゃないですからあたし」
「そうかな?将来はキャビンアテンダントになりたいんだって?」
「えっ!なんでそれ!」
「あれ、覚えてない?先生の授業で前、将来の夢について紙に書かせたじゃん」
「あ」
あれか。
なるほど。
「佐倉さんがいるその飛行機に先生乗ろっかなー」
「な、なんでですか…」
「見てみたいし?」
「…あっそ」
あたしは手を動かす。
「あっそって」
「先生は黙って自分の仕事してください」
「これ終わんないー」
「なにしてるんですか」
「あー、これね、毎回の小テスト作ってるんだけど、今回先生が作る番でさぁ。先生になって初めてでこういうの」
「…それ、あたしいてもいいんですか?」
「なんで?」
「なんで…って。あたし問題分かっちゃうじゃん…」
「あっ!」
「まぁ見ませんけど…」
「でも、見ても見なくても満点とるでしょ佐倉は」
「…なんであたしのことそんな上に見るんですか」
あたしなんて、
本当は優秀でもなんでもない。
ただ一生懸命、必死に努力してるだけ。
みんなが見てないところで。
元の知識も頭もない。
「え、なんでって。一生懸命じゃん?」
「…」
「そんな頑張り屋な佐倉さん、いいと思うよ?」
「…あたし決して…優秀なんかじゃないです。みんな誤解してる」
「んー、」
「ま、何も言えないけど」
「でもさ、努力しても結果が出ない人もたくさんいるよ?その分佐倉さんは結果出てるじゃん」
「…それほど努力してるってことです」
先生はにこっと笑った。