引越し先のお隣は。

「先生終わりましたっ!」



「まじで!本当助かった」



「いえ、なら終わったんであたし帰りますね」



あたしが立ち上がった時先生は言った。



「遅くなったし家まで送る」



「…へぇ?」



いまなんて??



「車乗って」



「あ…いや、まだ6時だし」



この季節、まだ暗くないし。



「いや、他の人に比べたら遅いから」



先生は真剣だったから、なんか断れなかった。



ま、あたしお家近いんだけどね。



そして初めて先生の車でお家まで送ってもらった。



「昨日さ、」



「はい」



「1組の関くん?と一緒帰ってるの偶然車で通りかかったんだけど気づかなかった?」



「え、そうだったんですか」



みられたってことだよね。



ま、あたしと関くんには何もないけども。



「それが階段で話してた男の子?」



「あ、はい」



「そっか」



「先生!そこ左です!!」



「やべっ」



「あーもー、なにやってるんですか!まぁこっちからも行けるけど遠回りなっちゃう」



「佐倉さんが早く言わないから?」



「あたしのせいっ!!?」



「てか、俺道知らないし」



「なら聞いてくださいよ!」



「いや、話に集中して」



「はい言い訳ー」



「ちげって」



「あでも待って!」



「は!」



「次左!」



「はっ!?」



「ちょっと!今の曲がれたでしょ!」



「いやいや急だったし、信号の前で言ってよ」



「信号の前で言った!」



「真ん前だった」



「あ…そう」



三浦先生って、こんなに面白いんだ。



「で、ちゃんと道教えてくんないといつまででも帰れないじゃん」



「分かりましたよー」



「おう」



「先生は、」



「ん?」



先生の横顔を見ながらあたしは



「どうして先生になったの?」



そう質問した。



しかも国語。



「なんでだろ。試験に合格したから?」



「ふーん?じゃあなんで国語?他にも教科あるじゃん。体育とか?」



「俺もよく分かんない」



先生は笑ってそう言った。



「ふーん?部活は?」



「顧問はテニス」



「え!テニス…でも自己紹介の時サッカーしてたって」



「そうなんだよね、テニスとかした事なかったし」



「じゃあなんで!」



「そう決まったんだよ。でもだいぶ分かってきた」



「そっか、テニスってことはあれ?今日も部活なんじゃ…」



「今日は元々行かない予定だったんだよ」



「あ、小テスト作るから?」



「まぁ、それもある」



「ふーん」



「俺の車に乗れたこと、レアだからな?もう無いからな?」



「なによそれ」



言い方面白いんですけど。



そういえば先生、彼女いるって。



まあそうだよね、こんな面白いしかわいいし、かっこいいからね。



「先生、着いた」



「お。ここか」



「うん、送ってくれてありがとう」



「いえ。俺こそありがとう」



「うん。じゃあまた明日」



「おう」



あたしは先生の車を出て



お家に入る前に手を振った。

< 14 / 34 >

この作品をシェア

pagetop