引越し先のお隣は。
そして。
どきどきの放課後はやって来た。
「夏芽!瞬を3Bに呼んだ!」
「そっか!ならあたし達も行きますか」
「うん」
3Bに行くまで、さくらちゃんはずっとあたしの手を握っていた。
「大丈夫だよ、さくらちゃん」
あたしは教室を出てすぐ近くのトイレで待機することになった。
「着いちゃった…あ〜っどうしよ〜」
「さくらちゃんの気持ち、ちゃんと伝えて来たらいいよ」
「そうだよね、うん」
3Bは電気がついていた。
だからきっと、先に間宮くんが待ってるんだってあたし達は思っていたけど…
「関くん??」
ドアを開ける時、さくらちゃんがそう呟いた。
「え?関くん?」
さくらちゃんの声に反応したあたしはドアの方に近づいた。
「…え、なに?」
関くんと他4人の声が聞こえた。
「だから!お前どうなったの、佐倉…なんだっけ」
「佐倉夏芽?」
「そう、それ!」
「佐倉さんがどうかした?」
関くん…。
「まさかお前、本気とか?」
「はっ?」
…
「いやどーなんだよ」
「なわけないだろバカかよ」
えっ…?
「やっぱり今回も騙しかよ〜お前飽きないね〜」
「俺にはやっぱこれが一番って感じ?」
うそ…だよね…
「夏芽…」
「…さくら…ちゃ…」
なんだか涙が出てきた。
もうだめだ、あたし。
そうだよね、初めから全部嘘だったんだよね…
そうだ…関くんは、付き合ってって言っただけ。
好きなんて一言も言われてないもん。
「佐倉?…どうしたんだよ」
「間宮、くん…」
「瞬…」
「なんで泣いてんだよ」
間宮くんはさくらちゃんの言葉を無視するように言った。
「…別に泣いて…」
すると間宮くんはあたしの手を掴んだ。
「ちょっ、やめてよっ」
「…あいつか」
「…え?」
「翔平…」
そう言って間宮くんは教室のドアを勢いよく開けて入った。
あたしの手は握られたまま。
「ちょっ、間宮くん!」
あたしの力じゃ間宮くんには叶わなかった。
「はっ!?お前らなんだよ!」
「佐倉さん?」
関…くん。
だめだ、泣いたってばれちゃう。
話聞いたってばれちゃう…。
「翔平どういう事。佐倉のこと騙したの」
「…瞬、何の話?」
「こいつ泣いてたんだよ。お前だろ原因」
するとひとりが
「…瞬?まさか間宮 瞬かよ…やべえ生で見た」
と言った。
「あ?」
「まあまあ間宮くん?君も同じでしょ」
そう言う関くんはあたしが知ってる関くんなんかじゃなかった。
「は?」
「俺さ、ずっと前から瞬が羨ましくて仕方なかったんだよね。モテるし?女の子ぜーんぶ瞬に行っちゃうじゃん?」
「お前そういうやつだったっけ」
「そう作ってたわけ。でもさ、今回はがちのチャンスだと思ったんだよね〜」
「はっ?」
「佐倉ちゃん。瞬に全く興味無い感じだったし?俺の方に来るチャンスかと」
「…最低だな。もう来んな顔も見たくない」
間宮くんはその言葉を残してあたしを引っ張り教室を出た。