失恋した直後のラインは甘い囁き
智也からのラインは不定期だった。


朝早かったり、夜遅かったり、昼間もまちまちだった。


ただ手が空いてる時はマメにラインをよこしてくれてるような雰囲気はあった。


智也の会話はそれなりに面白かった。


医者でなくちゃわからないような専門用語がたまに出た。


<ほんとに医者なの?>


と私が聞くと、


<今日はオペふたつもあった。疲れた寝る>


などと言う短いラインもくれた。



私は実習の時の医者や看護師の意地悪について愚痴をこぼしたりした。


<医者も看護師も気が強くなくちゃやっていけない部分もある。


 科にもよるけどね。理央ちゃんはきっと立派な看護師になれると思うよ>


<見てもいないのに適当な事言わないで>


私は智也には言いたい事が言える。


会った事がないからなのか、まったく気を使わないで本音が言える。


その言葉の中には甘えたがる自分がいたりもする。


<こうして話してれば理央ちゃんがどんな子かよくわかるよ。


 芯がしっかりしてて優しい。きっといい看護師になれる>


そう言われて私は少し赤面した。


<理央ちゃん、俺達そろそろ会ってみないか?>


と智也がいきなり言った。


私は言葉に詰まった。


確かに興味はある、かなりある。


でも、万が一好きになってまた振られたら・・。


智也のおかげで慶介に振られた傷はかなり癒された。


その智也にリアルで会ってガッカリされて、この楽しいラインのやり取りも終わりになってしまったら・・。


と思うと会う事に臆病になった。


返事を返せないでいると、ラインの呼び出し音が鳴った。


私は驚いて思わずスマホを落しそうになった。


ディスプレイには 智也 と映っている。


(ど、どうしよう・・)


鳴り続ける音に私は耐えきれず画面をタップした。


「理央ちゃん?」


と少しハスキーで優しい声が聞こえた。
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