お砂糖ひとさじ
薫くんは私より4つ上の21歳、それに比べて私はまだ17歳。薫くんからすればまだまだ青くさいガキだろう。
けれど私にとって薫くんは特別だから、薫くんにも私をちゃんと一人の女の人として見て欲しい。幼なじみとか、妹みたいな存在とかじゃなくて、それで少しでも可愛いって思われたい。
けれど、どうすればいいのか、どうするべきなのか、私にはまるで分からなくて。
私達の埋まらない年の差を際立たせるように、薫くんはどんどんカッコよくなっていくしどんどん女の子にもモテて、私はいつもそれを見ているばかりだった。
このままじゃダメなんだ、薫くんにとって私が特別になるには。でないとどんどん置いて行かれるだけで、優しい薫くんが振り向いた時にはもう、その隣に誰か別の相応しい人がいるんじゃないかって、そんな想像ばかりが頭によぎる。
どうにかしようと焦った私は、苦手を克服するところから始めた。例え背伸びでしかなかったとしても、それで薫くんに追いつけるのなら苦しくも何ともない。
コーヒーを飲めたら、少しは自信がついて薫くんに追いつけるような、そんな気がした。
コーヒーは、薫くんの好きな飲み物だ。いつも勉強する時や何かの片手間にはコーヒーがある。
そんな薫くんに対し、私は味覚がまだまだ子供のようでコーヒーは飲めない。
でも薫くんは年上だから、きっとコーヒーが飲めるような大人な女性に惹かれるんだと思う。大学の友達もみんな綺麗で、化粧が似合う大人な人達ばかりだった。
そんな人達に比べれば私がまだまだ幼く見えるのは仕方のないことかもしれない。
だから、私もはやく薫くんに追いつけるようにコーヒーを克服する。薫くんへの想いに比べればこれくらいの苦さ、何てこと、ない……はずなんだけど。