Bitter Chocolate
13
その頃要は自分の顔を鏡で見ていた。
傷ついて腫れた顔は何とも情けなく感じた。
人の妻に手を出してその夫に殴られる。
魔男の顔だ。
ヒカリとどうしても一緒になりたかったが
要にとっては武志も大事な後輩だった。
今更ながら自分のしてることがひどく残酷で
自分勝手だと思えた。
次の日、ヒカリに連絡したが
ヒカリの電話は繋がらなかった。
可南子は要の店のドアの臨時休業の張り紙を見て不安になって裏口に回り、呼び鈴を鳴らした。
奥から要が出てきて可南子はその顔を見て唖然とした。
「どうしたの?その顔?何があったの?」
可南子が頬に触れようとすると要はその指を避けた。
「武志に殴られた。」
「武志にバレたの?」
「ヒカリが打ち明けたんだ。」
可南子はヒカリの弱味を失った。
「あの子、バカじゃない?
自分からわざわざそんなこと言うなんて…」
「だから可南子…
俺はお前とはこれ以上付き合えない。
俺の気持ちは元々ヒカリにある。」
その事が公になったら二人は堂々と付き合うつもりなのかと思うと腹立たしかった。
可南子はそんな要を見て呆れ、
要を好きでいることもバカらしくなった。
「好きにすればいいわ。
でも武志は絶対にヒカリとは別れないわよ。」
可南子は要の店を出て車に乗った。
「バカみたい。所詮不倫のクセに…本気になっちゃって」
そんな気持ちに反して
可南子の目には不思議と涙が溢れてきた。
「バカみたい。」
そう言いながら可南子はその涙を拭ってギアを入れた。
そしてヒカリに対して怒りが込み上げてきた。
ヒカリが可南子の彼氏と不倫して武志と修羅場になった話はあっという間にヒカリの友達の間で広まった。
可南子が一番おしゃべりの初美にわざと話したからだ。
「ヒカリってそういうタイプじゃなかったのにね。
相手ってあのチョコレートの店の人でしょ?
あの人、ヒカリの旦那の親しい先輩だよね?
確かこの前のBBQにも来てたよね?」
「そんな相手と浮気なんて最低じゃない!
それでヒカリって今どうしてるの?」
「旦那が単身赴任先に連れて行ったって。」
「そりゃ置いておけないよね。
いない留守に浮気するの見え見えだもんね。」
「考えたらヒカリって中学の頃から武志と付き合ってたんだよね?
何か武志しか知らないまま結婚しちゃったから
今になって他の男も味見したくなったんじゃない?」
ヒカリは友達も無くしかけていた。
もともと友達とは言っても
スキャンダルと人の悪口がご馳走のような彼女たちとは
ヒカリは常に線を引いていた。
本当に大事なことは親友である麗子にしか話せなかった。
案の定唯一、麗子だけがヒカリを心配していた。
ヒカリの携帯は繋がらなかったが、
麗子は前に聞いた仙台の電話番号を控えていたのを思い出した。
「もしもし、ヒカリ?
麗子だけど…」
「麗子?どうしたの?」
「ヒカリ、仙台に行ったんだね。
何にも言わないで居なくなったから心配してたんだよ。」
「うん。ごめん。麗子には連絡しようと思ってた。
私が仙台にいるって誰に聞いたの?」
「初美。でも…初美に話したのは可南子だと思う。
あのね、ヒカリ…可南子のことだからわかってるとは思うけど
ヒカリは今、可南子の彼氏を寝とった
不倫女って事になってるの。
だから当分こっちには顔出さない方がいいと思う。
今、こっちに帰ってきたら余計変な噂が立つと思う。」
「うん。そうだよね。」
「それにしても可南子ったら…
ヒカリ…本当は可南子と付き合う前から要さんとは知り合いだったんでしょ?
あの人が武志さんの後輩だって事も知らなかったんだよね?」
「うん…知ってたらこんなことになってないよ。」
「だよね…。
とにかく元気ならいいんだ。また連絡するね。」
ヒカリはここに居るしかなくなった。
変に噂されてそれが広まるのは嫌だった。
自分は何を云われても仕方ないが
要や武志まで傷つけられるのは嫌だった。
傷ついて腫れた顔は何とも情けなく感じた。
人の妻に手を出してその夫に殴られる。
魔男の顔だ。
ヒカリとどうしても一緒になりたかったが
要にとっては武志も大事な後輩だった。
今更ながら自分のしてることがひどく残酷で
自分勝手だと思えた。
次の日、ヒカリに連絡したが
ヒカリの電話は繋がらなかった。
可南子は要の店のドアの臨時休業の張り紙を見て不安になって裏口に回り、呼び鈴を鳴らした。
奥から要が出てきて可南子はその顔を見て唖然とした。
「どうしたの?その顔?何があったの?」
可南子が頬に触れようとすると要はその指を避けた。
「武志に殴られた。」
「武志にバレたの?」
「ヒカリが打ち明けたんだ。」
可南子はヒカリの弱味を失った。
「あの子、バカじゃない?
自分からわざわざそんなこと言うなんて…」
「だから可南子…
俺はお前とはこれ以上付き合えない。
俺の気持ちは元々ヒカリにある。」
その事が公になったら二人は堂々と付き合うつもりなのかと思うと腹立たしかった。
可南子はそんな要を見て呆れ、
要を好きでいることもバカらしくなった。
「好きにすればいいわ。
でも武志は絶対にヒカリとは別れないわよ。」
可南子は要の店を出て車に乗った。
「バカみたい。所詮不倫のクセに…本気になっちゃって」
そんな気持ちに反して
可南子の目には不思議と涙が溢れてきた。
「バカみたい。」
そう言いながら可南子はその涙を拭ってギアを入れた。
そしてヒカリに対して怒りが込み上げてきた。
ヒカリが可南子の彼氏と不倫して武志と修羅場になった話はあっという間にヒカリの友達の間で広まった。
可南子が一番おしゃべりの初美にわざと話したからだ。
「ヒカリってそういうタイプじゃなかったのにね。
相手ってあのチョコレートの店の人でしょ?
あの人、ヒカリの旦那の親しい先輩だよね?
確かこの前のBBQにも来てたよね?」
「そんな相手と浮気なんて最低じゃない!
それでヒカリって今どうしてるの?」
「旦那が単身赴任先に連れて行ったって。」
「そりゃ置いておけないよね。
いない留守に浮気するの見え見えだもんね。」
「考えたらヒカリって中学の頃から武志と付き合ってたんだよね?
何か武志しか知らないまま結婚しちゃったから
今になって他の男も味見したくなったんじゃない?」
ヒカリは友達も無くしかけていた。
もともと友達とは言っても
スキャンダルと人の悪口がご馳走のような彼女たちとは
ヒカリは常に線を引いていた。
本当に大事なことは親友である麗子にしか話せなかった。
案の定唯一、麗子だけがヒカリを心配していた。
ヒカリの携帯は繋がらなかったが、
麗子は前に聞いた仙台の電話番号を控えていたのを思い出した。
「もしもし、ヒカリ?
麗子だけど…」
「麗子?どうしたの?」
「ヒカリ、仙台に行ったんだね。
何にも言わないで居なくなったから心配してたんだよ。」
「うん。ごめん。麗子には連絡しようと思ってた。
私が仙台にいるって誰に聞いたの?」
「初美。でも…初美に話したのは可南子だと思う。
あのね、ヒカリ…可南子のことだからわかってるとは思うけど
ヒカリは今、可南子の彼氏を寝とった
不倫女って事になってるの。
だから当分こっちには顔出さない方がいいと思う。
今、こっちに帰ってきたら余計変な噂が立つと思う。」
「うん。そうだよね。」
「それにしても可南子ったら…
ヒカリ…本当は可南子と付き合う前から要さんとは知り合いだったんでしょ?
あの人が武志さんの後輩だって事も知らなかったんだよね?」
「うん…知ってたらこんなことになってないよ。」
「だよね…。
とにかく元気ならいいんだ。また連絡するね。」
ヒカリはここに居るしかなくなった。
変に噂されてそれが広まるのは嫌だった。
自分は何を云われても仕方ないが
要や武志まで傷つけられるのは嫌だった。