Bitter Chocolate
17

突然の兄の訪問に武志は戸惑っていた。

ヒカリを監禁してると知ったら
兄はヒカリを連れて帰るだろう。

「お義兄さん、ヒカリは…友達と出掛けてて…」

「こっちには友達も居ないだろ?」

「れ、麗子ちゃんが遊びに来てて…
今日は外に…」

「とりあえず部屋に入ってヒカリを待つよ。

ドアの暗証番号を教えてくれ。」

「いや、あの…それではなんですから…

俺の会社の近くまで来られませんか?

場所をメールしますので…

美味しいものでもご馳走しますから。」

武志は半休を取って兄と食事をしたあと
色んな場所に案内し、
何とかその場をしのいだ。

そして家に帰ると兄に少し外で待ってもらい
ヒカリを部屋から出し、口止めした。

兄は武志の様子がおかしいと思っていた。

麗子の言ったことは本当のようで…
ヒカリはこの家に閉じ込められてるのでは無いかと思った。

兄は武志が部屋に入ると
外で待たずにすぐに武志の後をつけた。

鍵をかけられた部屋からヒカリを出して

「わかってるな。心配させないように帰せよ。」

とヒカリを脅しているように話している武志をみて
兄は居ても立ってもいられなくなった。

「ヒカリに何て事を…」

「お義兄さん…あの…これは…

すいません!

どうしてもヒカリをあの男の所には行かせたくなかったんです!」

「だとしてもこれは無いだろ?」

兄はヒカリを連れて帰ると言った。

「武志、一旦ヒカリは家で預かる。
あの男には逢わせないから安心しろ。」

結局ヒカリは兄と東京に戻ることになった。

帰りの新幹線の中でヒカリは泣いていた。

「辛かったよな。
でも、武志も追い詰められてるんだ。

…ヒカリがしたことはそれだけ回りを傷つけてるんだ。」

「…わかってる。」

「あの男とは別れられないのか?」

「ごめんね…お兄ちゃん。

来てくれてありがとう。」

兄はヒカリの頭を撫でた。

ヒカリが悪いことをしてるとわかっていても
泣いているヒカリを見ると可哀想になってしまう。

元々ヒカリは兄とは年も離れてて
兄は赤ちゃんの時からヒカリの面倒をみていた。

兄としてはホントに可愛い妹だった。

父が居なくなった今となっては
自分がヒカリを守らないといけないと思ってる。

「とにかくウチで少しゆっくり考えろ。」

実家に戻ると母はヒカリをとても心配していた。

「ヒカリはどうしたいの?

ヒカリがホントに武志さんともうダメなら…
好きにしなさい。

そんな辛い思いして一緒に居るくらいなら
別れた方がいいわ。」

てっきり母からは反対されて怒られると思ってた。

母は武志がヒカリに酷い仕打ちをしたことが許せなかった。

娘が例え悪くても
母から思えば武志の行動は行きすぎていると思った。

ヒカリは東京に戻って来たが
心配している母や兄を思うと
要には連絡出来なかった。


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