Bitter Chocolate
18
ヒカリはとりあえず助けてくれた麗子に
連絡をして会う約束をした。

「ヒカリ!
無事に帰れて良かった~。

大丈夫なの?」

「ありがとね。麗子が居なかったら私はどうなってたか…」

「要さんには連絡した?」

ヒカリは首を横に振った。

「今は武志にも、お兄ちゃんにも申し訳なくて…」

「そっか。そうだよね。

何か私に出来ることは無い?

とりあえず要さんにはこっちにいるって教えておこうか?」

「まだ黙ってて…

連絡とれなくて心配してるだろうから
元気だから心配しないようにだけ言ってもらえる?」

「うん。」

麗子からヒカリが無事だと聞いた要は少し安心した。

でもヒカリに逢いたい気持ちは増すばかりだった。

「俺、仙台に行ってヒカリを連れてくる。」

玲子はそれを聞いてヒカリは仙台に居ないと話してしまった。

「ヒカリはこっちに?」

「ヒカリからは口止めされてたんだけど…

今は実家に…

でもお母さんやお兄さんが心配するから
暫く逢うのはやめるって…

ヒカリに少し時間をあげて。」

それでも要はヒカリの顔が見たかった。

遠くからでも逢いたくてヒカリの実家の近くまで行ってみた。

しばらく待っているとヒカリが母親と買い物に行くために外に出てきた。

しばらくヒカリの後を追いかけて
ヒカリが一人になったとき、
要はヒカリの前に立った。

逢わないつもりだったのに
どうしてもヒカリと話したかった。

「要…どうしてここに?」

「少しだけ話せないか?」

「無理よ。お母さんがいる。」

ヒカリはその場を去ろうとしたが、
要はヒカリの腕を掴んで離さない。

「お願い。今は行かせて。」

「武志と何があったんだ?」

二人の様子を戻ってきた母が気付いた。

「ヒカリ、この人って…あの…?」

「お母さん、ごめん。今、行くから。」

ヒカリは要の掴んだ腕を離そうとした。

すると母が

「私は一回りしてくるから二人で少し話しなさい。」

と言ってくれた。

要は頭を下げ母に礼を言った。

二人はすぐ近くにあるカフェに入った。

「麗子がお兄ちゃんに言ってくれて助けてもらったの。」

「助けてもらったって…
お前、武志に何されたんだ?」

「部屋に閉じ込められてたの。

時には物をなげつけたり、

暴力的こそ振るわなかったけど…

テーブルをひっくり返したり
壁を拳で殴ったりして…
別人みたいになっちゃった。」

話してるうちにヒカリの目から涙が溢れてこぼれ落ちた。

「怖かったろ?ごめんな。」

要はヒカリを抱きしめたかった。

「お兄さんに逢ってみるよ。

何とかヒカリとの事を認めてもらわなきゃ…」

「武志のことが先よ。

今のままじゃ武志は絶対納得しないし…
このまま一方的に別れるとは言えないの。」

ヒカリは泣いていても要よりずっと冷静だった。

要は別れ際、人目のつかないビルの影に隠れて
ヒカリに長いキスをした。

こんな時なのにヒカリは要に抱かれたくなる。

それは要も同じだった。

「ヒカリが欲しい。」

ヒカリは首を横に振ったが
本当はヒカリもそうしたかった。

でも今は時間がない。

「ヒカリ…時間を見つけて店に来て。」

ヒカリは頷くと街の中へ出ていった。

要はその後ろ姿ずっと目で追っていた。



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