Bitter Chocolate
20

麗子に連絡してヒカリは無事に家に戻った。

いつまでもこんな生活は続けていられない。

ヒカリは武志ときちんと向き合って話さなければならなかった。

「お兄ちゃん…武志ときちんと話したいと思ってる。
仙台に行こうと思うの。」

「二人で話すのは良くない。
武志をここに呼ぶから俺のいる前で話せ。」

「うん。」

「お前はどうするつもりなんだ。」

「武志とは…もう。」

「だからってあの男のところに行くのは許さないぞ。
別れたからってあの男のところにすぐにって訳には行かない。」

「…うん。」

次の週末、武志がやって来た。

ヒカリに酷いことをしたのでもちろん歓迎はされなかった。

「武志…ヒカリはお前とはっきりさせたいそうだ。」

武志は別れを切り出されるとわかっていた。

しかし簡単には諦められなかった。

「ごめんなさい。
もうこれ以上一緒に居たら私は武志をもっと傷つける。」

目の前で泣くヒカリを武志は信用してない。

この涙は要と一緒になるための芝居なのだと思った。

「あの男のところに行くつもりだろ?」

「武志がそう思うのも無理は無いが…
俺がヒカリとあの男を一緒になんかさせない。」

「お兄ちゃんは黙ってて。

武志がそう思うのは無理ないと思う。
約束する。 結婚はしない。
ずっとしないかはわからないけど…
武志が幸せになるまで私も再婚はしないから。」

「ヒカリ…そんなに俺が邪魔なのか?」

武志は別れるとは決して言わなかった。

武志が邪魔な訳じゃない。

ヒカリは今のままじゃ武志がもっと苦しむと思ったから
別れるつもりでいるのだ。

でも今の武志の頭の中には何としてもヒカリと要を別れさせることだけだった。

「どうするヒカリ?
今の武志に何を言っても聞かないぞ。」

「うん…そうだね。」

ヒカリは暫く仙台に戻ることにした。

その選択に兄も要も麗子も反対したが
近くにいて説得するしかないと思った。

武志はほとんどヒカリと会話しなかった。

献身的に尽くすヒカリの意図がわかっていたから
ヒカリに心を許したりもしなかった。

3ヶ月過ぎても武志との距離は平行線のままだ。

ある夜、酔って帰ってきた武志はヒカリに言った。

「もう東京に帰れよ。」

「ちゃんと話してくれるまで帰らない。」

「別れる気はない。」

「武志は意地になってるだけでしょ?
私たちはもうとっくに夫婦として破綻してるじゃない?」

「俺はお前を愛してるよ。
変わらず愛してるんだ!」

武志はヒカリを押し倒した。

ヒカリは抵抗したが武志の力には敵わなかった。

武志は嫌がるヒカリを見て余計に腹が立った。

「俺たちはまだ夫婦だろ?」

ヒカリは武志の頬を叩いた。

武志はもっと頭に来てヒカリがどんなに嫌がっても最後までやめなかった。

そしてヒカリは次の朝、
武志とは別れられないまま東京に戻ってきた。

「武志とは話がついたのか?」

「ううん。3ヶ月も居たのに全然話せなかった。」

結局ヒカリはそのまま実家で暮らした。

要にはずっと逢わなかった。

武志とハッキリするまで逢わないと決めたのだ。

ところが2ヶ月経つとヒカリは身体の変化を感じた。

ヒカリは武志に無理矢理抱かれたあの夜のことを思い出していた。

あの時に武志の子供を身籠ってしまったのだと思った。













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