Bitter Chocolate

21

ヒカリは家から離れた病院にいた。

子供が出来たかもしれないと家族には話せなかったが
麗子にだけは話した。

結果は思ったとおりだった。

「どうするの？」

「どうするって…もちろん産むよ。」

「武志さんの子供なんだよね？」

「うん。」

「今まで出来なかったのにどうして今なの？」

「25までは作らないって決めてたから
今まではちゃんと気を付けてたからね。」

武志はあの時そんな事を気遣う余裕はなかった。

「仙台で何があってこうなったの？
まさか武志さんに？」

ヒカリは答えなかったが麗子にはわかっていた。

今さら二人が子作りするハズがない。

合意ではなかったはすだ。

麗子はヒカリを抱きしめた。

「それで帰ってきたんだね。

でもそんなことがあってこのまま武志さんと暮らせる？」

「それは無理だと思う。」

「じゃあ要さんと？」

ヒカリは首を振った。

「武志の子供がいるのに…
要のところには行けないよ。」

「ヒカリ…一人で育てるのは無理だよ。
要さんの所には行けないにしても
辛くても武志さんには話さなきゃ…。」

「武志は自分の子だって信じてもくれないと思う。」

ヒカリは武志にも言わずに居たが
兄嫁がヒカリの異変に気づいた。

ヒカリが夜中にトイレで吐いてたからだ。

兄嫁はヒカリが最近、食事を一緒に取らないのもおかしいと思っていた。

「ヒカリちゃん、もしかして妊娠してるんじゃないかしら？」

兄嫁は心配になってそれをヒカリの兄に相談した。

「妊娠て…誰の子だよ？」

「それはわからないけど…
でも武志くんとはもうそういう仲じゃないんじゃない？」

「ヒカリはずっと仙台に居たんだ。

それに最近、あの男には逢ってないはずだ。

武志の子供でもおかしくないよな？」

「わからないわ。
それはヒカリちゃんしかわからないわよ。」

兄はヒカリが話すのを待っていたがヒカリからは何も言ってこない。

兄はヒカリに問いただした。

「お前、妊娠してるのか？」

ヒカリは少しびっくりしたが
隠せる話でもないので正直に頷いた。

「誰の子供だかわかってるよな？」

「うん。」

「どっちだ？」

「どっちだったらいいの？」

「武志の子ならまだ許されるだろ？」

兄は武志が何をしたかわかってない。

「違うって言ったら？」

「違うのか？」

「どっちだとしても一人で産むから。」

「あの男の子供なんだな？」

兄は突然部屋を出ていった。

ヒカリは兄を追いかけたがその時、お腹に激痛が走った。

ヒカリが倒れ、ビックリした兄嫁がヒカリの兄を呼び戻した。

ヒカリは病院に運ばれ、
子供は幸いにも無事だったが
無理をすれば流産すると言われた。

「ヒカリ…あの男の子供なんだろ？」

ヒカリは首を振った。

「武志よ…。武志の子なの。」

「武志に話さないつもりなのか？」

「きっと疑うよ。

父親にそんな風に思われたらこの子が可哀想じゃない。

武志には言わないで。」

しかし、兄は武志に言わないわけにはいかなかった。

兄は武志に連絡してヒカリに起きたことを話した。

武志は仙台からヒカリの元にやって来た。

「ヒカリ…ごめん。
俺たちやり直そう。
この子のためにもやり直さなきゃ。」

そう言ってヒカリを抱きしめた。

ヒカリは思ってもみない武志の反応に戸惑った。