Bitter Chocolate
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可南子とヨリを戻したといっても
要は可南子に冷たかった。

デートもしたことがなく甘い言葉も言われた記憶はない。

もちろんそれなりに身体の関係はあった。

しかし時間が経つにつれ自分はそれだけの相手のような気がして寂しくなった。

要を手に入れた気でいたが、
その寂しさは付き合う前と何も変わらなかった。

「私って要の何なの?」

「…さぁ、何かな?」

「こんな扱いするなら付き合うとか言わないでよ!
まさかまだヒカリのこと引きずってるの?」

「ヒカリの話はするな。」

可南子は部屋を飛び出して
最近言い寄られてる男に連絡をした。

「今日は暇だから付き合ってもいいわ。」

そして可南子はその男と度々浮気するようになった。

しかし要の方は全く可南子に興味がないのか
可南子の変化にも気がつかなかった。

そしてある日、要の店に麗子がチョコレートを買いに来た。

「あ、麗子ちゃん、久しぶりだね。」

要はヒカリのことを聞きたかったが
武志と仲良くしていると思うと何も聞けなかった。

麗子はヒカリが要に何も話してないことを知らず、
なぜ武志と離婚したのに要がヒカリとヨリを戻さないのかと思っていた。

「元気そうだな?
今日はチョコレートを買いに?」

「えぇ、ちょっと知り合いの家に行くので
手土産にここのタルトを…と思って。」

二人ともヒカリの話がしたいのに言い出せない。

「麗子ちゃんは彼氏出来たの?」

「いえ、まだ…」

「そうか。」

麗子は我慢できなくなった。

「ヒカリもまだ一人ですよ。」

「え?」

「どうして許してあげないんですか?
武志さんの子供が出来たのはヒカリのせいじゃないのに…」

要は麗子が何を言ってるのかよくわからなかった。

「武志の子供?」

「まさか…知らないんですか?

ヒカリから何も聞いてないんですか?」

麗子は要が何も知らないと知って口が重たくなった。

「麗子ちゃん、少し何処かで話せないかな?

忙しいなら今日じゃなくても…」

「今日の夜なら時間とれます。」

麗子は要と夜に会う約束をして店を出ていった。

そしてその夜、要の店で麗子と話した。

「ヒカリは妊娠してしまったんです。

仙台で武志さんに無理矢理…だったみたいです。

そんなことがあってこっちに帰ってきたんだけど…
武志さんの子供が出来てしまって…」

「それでヨリを戻したんだね?」

「戻してませんよ。

ヒカリは一人で育てるつもりでいました。

だけど…要さんに別れると言った日の帰り道で流産してしまって…」

「子供はダメだったってこと?」

麗子は静かに頷いた。

「そのあとすぐに武志さんとは離婚しました。

武志さんは自分の子供を殺したってヒカリを責めたんです。

それでもう二人の間は冷えきってしまって…別れたんです。
もっともヒカリの方はずっと離婚したかったんですが…」

要は麗子にその話を聞いて
なぜヒカリは自分のところに戻ってこないのかと思った。

「ヒカリはどうしてそれを俺に言わなかったんだろう?」

「ヒカリはヒカリなりに要さんに悪いと思ったんじゃないでしょうか?

それにあっちがダメになったから
こっちってワケにはいかなかったんでしょう。」

要はその話を聞いてすぐにでもヒカリのところに行きたかった。

しかし、そこに可南子が現れた。

「可南子…いつからそこに…」

可南子は何も言わずに店を出ていった。







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