Bitter Chocolate
32
要がヒカリの身体から離れて
運転席に戻って窓を開けた。
「いい風だな。」
「要…可南子と結婚するんでしょ?」
「やめたんだ。」
「どうして?」
「俺にはお前しか居ない。」
ヒカリはその場に居るのが辛くなった。
衝動的に愛し合ってしまったけど
正気に戻ると自分のしたことが恥ずかしくなった。
要の元には戻らないと決めたのだ。
武志をあんなに傷つけて
今度は惠佑を傷つけることになる。
「ごめん。間違ってるよね。
私たちもう逢っちゃいけないってわかってるのに…
こんなことしちゃうなんて。」
要はヒカリが自分のところに戻ると思っていた。
しかしあの時、ヒカリが受けた傷はそんなに簡単に癒せなかった。
「ヒカリが戻りたくないのはわかってる。
あの時、俺に逢ったせいでヒカリは子供を失ったと思ってるんだろ?」
「そんなこと思ってない。
でも…要と一緒になったら私…
何もかも忘れてしまうの。
武志にあんな酷い事をさせたし…
武志との赤ちゃんまでなくしてしまったの。
そんなことを忘れて幸せになるなんて許されないでしょ。」
「もっと自分に正直に生きればいいんだ。」
「正直に生きたからこうなったの。
要の事もいつかホントに傷つけてしまう気がする。」
「傷ついたっていい。
俺はお前以外こんなに愛したり出来ない。」
ヒカリも要もお互いに想いが強すぎる。
ヒカリはこのまま突き進んだら二人とも壊れてしまう気がして怖かった。
「私は普通の恋をするの。
要じゃ気持ちが重すぎる。
逢ってすぐ火がついたみたいに抱き合うなんて私たちどうかしてるよ。
最初からそうだった。
要と居ると私は私じゃなくなるの。」
「それが愛し合うってことだと思わないのか?」
「無理よ。要とじゃ疲れるの。」
ヒカリは車から降りようとしたがドアにはロックがかかっていた。
「開けて。」
「帰さない。」
「降ろして。」
「降ろさないよ。」
要はヒカリのシートベルトをしながらキスしてきた。
ヒカリはまた要と離れられなくなった。
そして車を走らせて自分の店に連れていった。
武志と過ごしたこの街に来るのは久しぶりだった。
「降りろよ。」
「ここに連れてきてどうするの?」
「一緒に暮らさないか?」
「ダメだよ。」
ヒカリは車を降りて帰ろうとしたが
電話さえも持ってきていなかった。
「明日、仕事があるの。
何も持ってきて無いし、とりあえず家に帰らせて。」
要は車から降りようとしないヒカリの手を引っ張って
自分の店に連れていった。
「チョコレート食べるか?」
「要…お願い。もう帰らせて。」
「これを食べたら送ってく。」
要は持ってきたチョコレートをヒカリの口に入れた。
苦くて甘いチョコレートの香りが口一杯に拡がった。
「ショコラノアール?」
「もう一度ヒカリに食べさせたくなった。」
ヒカリはその懐かしい味に昔を思い出した。
要の部屋で抱き合った日にこのチョコレートを今みたいに口にした。
甘いだけじゃ物足りない…その苦さが病み付きになる。
ヒカリはその味がまたあの時のように
自分の想いと重なった。
運転席に戻って窓を開けた。
「いい風だな。」
「要…可南子と結婚するんでしょ?」
「やめたんだ。」
「どうして?」
「俺にはお前しか居ない。」
ヒカリはその場に居るのが辛くなった。
衝動的に愛し合ってしまったけど
正気に戻ると自分のしたことが恥ずかしくなった。
要の元には戻らないと決めたのだ。
武志をあんなに傷つけて
今度は惠佑を傷つけることになる。
「ごめん。間違ってるよね。
私たちもう逢っちゃいけないってわかってるのに…
こんなことしちゃうなんて。」
要はヒカリが自分のところに戻ると思っていた。
しかしあの時、ヒカリが受けた傷はそんなに簡単に癒せなかった。
「ヒカリが戻りたくないのはわかってる。
あの時、俺に逢ったせいでヒカリは子供を失ったと思ってるんだろ?」
「そんなこと思ってない。
でも…要と一緒になったら私…
何もかも忘れてしまうの。
武志にあんな酷い事をさせたし…
武志との赤ちゃんまでなくしてしまったの。
そんなことを忘れて幸せになるなんて許されないでしょ。」
「もっと自分に正直に生きればいいんだ。」
「正直に生きたからこうなったの。
要の事もいつかホントに傷つけてしまう気がする。」
「傷ついたっていい。
俺はお前以外こんなに愛したり出来ない。」
ヒカリも要もお互いに想いが強すぎる。
ヒカリはこのまま突き進んだら二人とも壊れてしまう気がして怖かった。
「私は普通の恋をするの。
要じゃ気持ちが重すぎる。
逢ってすぐ火がついたみたいに抱き合うなんて私たちどうかしてるよ。
最初からそうだった。
要と居ると私は私じゃなくなるの。」
「それが愛し合うってことだと思わないのか?」
「無理よ。要とじゃ疲れるの。」
ヒカリは車から降りようとしたがドアにはロックがかかっていた。
「開けて。」
「帰さない。」
「降ろして。」
「降ろさないよ。」
要はヒカリのシートベルトをしながらキスしてきた。
ヒカリはまた要と離れられなくなった。
そして車を走らせて自分の店に連れていった。
武志と過ごしたこの街に来るのは久しぶりだった。
「降りろよ。」
「ここに連れてきてどうするの?」
「一緒に暮らさないか?」
「ダメだよ。」
ヒカリは車を降りて帰ろうとしたが
電話さえも持ってきていなかった。
「明日、仕事があるの。
何も持ってきて無いし、とりあえず家に帰らせて。」
要は車から降りようとしないヒカリの手を引っ張って
自分の店に連れていった。
「チョコレート食べるか?」
「要…お願い。もう帰らせて。」
「これを食べたら送ってく。」
要は持ってきたチョコレートをヒカリの口に入れた。
苦くて甘いチョコレートの香りが口一杯に拡がった。
「ショコラノアール?」
「もう一度ヒカリに食べさせたくなった。」
ヒカリはその懐かしい味に昔を思い出した。
要の部屋で抱き合った日にこのチョコレートを今みたいに口にした。
甘いだけじゃ物足りない…その苦さが病み付きになる。
ヒカリはその味がまたあの時のように
自分の想いと重なった。