Bitter Chocolate
33
ヒカリは要に家まで車で送ってもらった。

「じゃあね。」

ヒカリがシートベルトを外してドアを開けようとすると
要がヒカリの名前を呼んで呼び止めた。

「ヒカリ…また会えるよな?」

何も言わないでドアを開けようとするヒカリの腕を掴んで
要はヒカリの顔を自分の方へ向かせると
その大きな手でヒカリの頬を撫でた。

「また逢いたい。」

そう言ってヒカリのおでこにキスをする。

そして要の唇はヒカリの瞼へ鼻へと下に降りて行き
唇に重なった。

ヒカリの唇を何度も軽く要の唇が摘まむようにキスを繰り返す。

そして要のその熱い舌がヒカリの口を抉じ開けるように中に入ってくるとお互いの舌を絡め合い、
激しくそれを繰り返した。

ヒカリの身体はまた熱くなって
要と離れたくなくなった。

ヒカリが要に触れて欲しくなると
要はなぜかヒカリにキスするのをやめた。

「ここまでにしとく。

ヒカリが今夜、俺の事を思い出して眠れなくなったら電話してくれ。」

ヒカリは熱くなったままで要と別れた。

要が好きだとまた思い知った。

家に帰ると置いていったスマートフォンに何件も着信とメッセージが届いていた。

そのほとんどが惠佑だった。

連絡しようか迷っていると惠佑から着信があった。

「もしもし、ヒカリさん?

やっと繋がった。」

「ごめん、友達に逢ってて…携帯、家に忘れちゃってたから」

友達と言ったとき胸が痛んだ。

ヒカリは惠佑に話さなくてはいけないと思った。

「惠佑くん、明日少し時間取れる?」

「うん、何?」

「話があるの。」

惠佑は少し不安になった。

「旅行の返事かな?」

「うん、それもちゃんと話したい。」

惠佑は居ても立ってもいられなくなった。

明日、フラれるかもしれないと思うと
ヒカリに別れの言葉を考えさせる時間を与えたくない。

「今から逢えない?」

「え?でももう遅いし…」

「どうしても今夜、ヒカリの顔が見たいんだけど…。」

惠佑がヒカリを呼び捨てにすると、
ヒカリは少しドキッとする。

「少しなら…」

ヒカリはまだ要とのキスの余韻が残ったまま惠佑に逢うことにした。

30分後、惠佑はヒカリの家の前に来た。

ヒカリは家を抜け出し惠佑の車に乗った。

同じようにさっき要と逢ったばかりで
急に要と車の中でしたことを思い出して恥ずかしくなった。

「こんばんは。」

惠佑はにっこり笑って挨拶をした。

ヒカリは惠佑の笑った顔が好きだ。

笑うと片方にえくぼが出来るのが何とも言えずに可愛い。

「今日はゴメンね。」

ヒカリは惠佑の目を見ずに言った。

惠佑はその意味を知ってる。

ヒカリの気持ちは明らかに自分ではない男にある。

「ヒカリさん、男がいるよね?

旦那さんと別れる原因になった人?

まだ繋がってる?」

ヒカリはいきなり惠佑に核心を突かれて言葉を失った。
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