Bitter Chocolate
36
ヒカリは惠佑に手を引かれて
今度は惠佑の車に乗せられた。

「話し合うって…話し合いなんかまともにできないだろ?

あの男…ヒカリにいきなりキスしようとした。」

「ごめん。」

「ああいう強引な男が好き?」

「そうじゃないよ。」

「苦しい恋だって言ってたろ?

何にも考えなくなるくらい夢中になるって…

そんなのただ強引なだけじゃないか?

ヒカリに考える暇も与えないで突き進んでくるだけだ。」

そうじゃないとヒカリは心の中で思っていた。

要とはどうしようもなく惹かれ合うのだ。

他人から見たらただsexするだけだと思われるだろう。

でも違う。

何もかも捨てられるほど大切なのだ。

だけどそれは許されることじゃない。

要といたらヒカリは一時も要と離れられなくなる。

要が他の女と話してるだけで気が狂いそうになるほど嫉妬するだろう。

要が全てで他には何も要らなくなる。

そんな風になりたくないのだ。

しっかりと回りを見て恋したいのだ。

惠佑と居るときみたいに穏やかに笑っていたい。

自分が自分でなくなるような…
あんな風には2度となりたくないのだ。

要に触れられるとヒカリは何もかもどうでも良くなった。

惠佑さえ捨てようとしたのだ。

「惠佑くん、お願い。

ちゃんと捕まえてて。
私があの人の所に行かないように…

惠佑くんしか止められないの。」

惠佑はヒカリを抱きしめる。

「何処にも行かせないから。」

要が現れたせいでさっきまでの幸せな気分が台無しになった。

惠佑は絶対にヒカリを要に渡したりしないと心の中で誓っていた。


要は1人ヒカリの家の前でヒカリが帰ってくるのを待った。

さっき惠佑がヒカリの髪を撫でた時…
ヒカリが惠佑を見つめて頷いた時…
嫉妬でどうにかなりそうだった。

ヒカリが惠佑と寝たことを認めたくなかったが
二人が男と女の関係であることはあの姿を見ればわかった。

「ヒカリ…何でだよ…」

要はヒカリの気持ちがわからなかった。

あんなに夢中になって一時は武志まで捨てたのに…
武志が去った今、
ヒカリは要じゃなくて惠佑を選んだ。

「俺とは一生逢わないつもりか?
一生愛さないつもりかよ。」

要はどうしても納得できなかった。

その日、夜中まで家の前で待ったがヒカリは現れなかった。

その時、ヒカリは惠佑の部屋にいて
惠佑に抱かれていた。

ヒカリは惠佑に要を忘れさせて欲しかった。

ヒカリの中にはまだ要が居て
その記憶は鮮明に残っている。

要がどういう風にヒカリを抱くか…
ヒカリの身体は記憶している。

惠佑に愛されると少しだけ自分の形が変わるような気がした。



















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