Bitter Chocolate
46
ヒカリは病院に駆けつけ、
ひたすら要が助かるのを祈った。

要はその思いが届いたのか
奇跡的に息を吹き返した。

ヒカリが願う姿を要の母が偶然見かけ
ヒカリに声をかけた。

「峠は越えたわ。
今夜はもう帰って休みなさい。
明日また来てくれればいいわ。」

ヒカリはそれでも帰らずに朝を待った。

要は目を覚まし、

「ヒカリ…ヒカリは?」

とヒカリを探した。

意識は戻り、母は外にいるヒカリを呼んだ。

「要が呼んでるわ。」

ヒカリが病室に入ると要はヒカリを側に呼んだ。

ヒカリは要の手を握り涙を流して喜んだ。

「ごめんなさい。私のせいで…」

「そうじゃない。ヒカリが刺されなくてよかった。

ヒカリ…ちゃんと顔を見せて。」

ヒカリは目に涙をいっぱい溜めて要をみている。

両親も兄も2人きりにしてあげようと病室から出て行った。

要はヒカリに言った。

「もう離れたりするなよ。
一緒に生きてくれるよな?」

要がそう言うとヒカリは泣きながら頷いた。

そして二カ月後、要はやっと退院して
ヒカリはめでたく要の妻となった。

結婚式は小さな教会で親近者だけで行った。

麗子は2人の幸せを本当に喜んでいた。

「やっと幸せになれるね。」

「うん。」

「武志さんから伝言預かったの。

幸せにって。色々ごめんだって。」

「そう。」

武志は要の事件を知って
ヒカリが幸せになることを本当に心から願っていた。

わだかまりはもう無くなって
ヒカリの心も軽くなった。

麗子は相変わらずヒロと仲良くしてる。

「それと惠佑くんからも…おめでとうって。」

ヒカリの胸は少しだけ痛む。

惠佑とは本当に幸せだった時期もあったからだ。

だけどあの時お互いを信じられ無かったのは
きっと縁が無かったんだろう。

そして新婚3ヶ月が過ぎても
相変わらず要との生活は官能的だった。

仕事が終わると要はヒカリにキスをする。

要の口からチョコレートがヒカリの口の中に移されて
舌を絡めながら溶かしていく。

「ビターチョコレート?」

「うん。ヒカリ、好きだろ?」

「もう苦いのはイヤ。甘いだけでいい。」

「甘いばっかりじゃ飽きる。

たまには苦さも必要だよ。」

そしてヒカリは要に言った。

「じゃあ…告白します。

哀しまないでね。

要が一番じゃなくなるかも。」

「え?」

「出来たの。」

「何が?…オトコ?」

「バカね…要と私の赤ちゃん、出来たの。」

そして要はヒカリを抱きしめる。








〜bitter chocolate〜

The end




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