Bitter Chocolate
5
ヒカリは可南子にカフェに呼び出された。

「アタシね、要さんと付き合うことになった。」

嬉しそうに話す可南子と対称的にヒカリの気持ちは沈んでいく。

「そうなんだ。良かったね。
要さんが付き合おうって言ったの?」

「うーん…ま、そうかな?」

嬉しそうに笑う可南子に
ヒカリはショックを受けた。

要にとってヒカリはあの時だけの相手だと思った。

「要さんてどんな人?」

ヒカリが可南子に聞くと

「まだよくわかんないけど…優しい人かな。」

ヒカリは一度も優しくなんてされたことない。

ヒカリには身体だけ求めて来たような男だし
ヒカリを抱いておきながら
目の前で友達とイチャイチャするような男だ。

「優しいってどういうとこが?

あの人って手が早いみたいだし…

可南子あの日、帰りに何かされなかった?」

ヒカリは遠回しに探ってみた。

「それが全然よ。
紳士的っていうか大人の男っていうか…
その辺の男みたいにガツガツしてなくて…大人って感じ。」

ヒカリには野獣のようにガツガツしてたのに…。

見くびられてると思った。

「ヒカリ、これから一緒に要さんのお店に行かない?」

ヒカリは少し悩んだけど
要のお店に付いて行くことにした。

要がどういうつもりであんなことをしたのか知りたいと思ったからだ。

というのは口実で本当は要の顔が見たかったのかもしれない。

「お店、結構混んでるね。」

「ここね、チョコタルトも人気みたいなの。
この前、雑誌に載ってたのよ。」

可南子は要について色々調べたようだった。

「いらっしゃい。あ、可南子ちゃん、こんにちは。

武志の奥さんも一緒なんだ。

この前はご馳走さまでした。」

ヒカリは要を睨み付けた。

武志の奥さん…て何となく嫌な感じだ。

お店は忙しくて要一人では大変そうだった。

可南子はヒカリに

「ちょっと手伝ってあげようよ。」

と言った。

冗談じゃないと思ったが
可南子に頼まれて仕方なく手伝った。

タルトが売り切れると少し落ち着いた。

「助かったよ。ありがとう。

武志の奥さんもすいません。」

「要さん、武志の奥さんて言い方は良くないわ。

彼女はヒカリって言うの。

名前で読んであげて。」

「ヒカリさんていうんだ?

ありがとう。ヒカリさん。」

ヒカリは要の一言、一言に頭に来た。

だんだん気分が悪くなり、居心地も悪かった。

「アタシ、そろそろ帰るね。」

「ちょっと待って、お礼にチョコレート少し持ってって。」

ヒカリが帰ろうとすると要が呼び止めた。

「アタシ、ちょっと化粧室に…」

と可南子が席を外した。

「要らないから。」

「何か怒ってるだろ?」

「別に。」

「ヒカリ…今度は一人で来いよ。
あの子が居たんじゃ何にもできねーし…」

「可南子と付き合ってるんでしょ?
よくそんなこと…」

「俺はこういう男だから。

それにあの子と付き合えばヒカリにもこうして逢えるだろ?」

「最低。」

ヒカリは可南子を待たずに店を出た。









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