Bitter Chocolate

9

要の唇がヒカリの首筋に触れる。

そして大きな手がヒカリの胸を包んだ。

ヒカリは逃げようとしたけど要はヒカリを離さなかった。

要の舌がヒカリの舌に絡んでくる。

そんなキスをされると
ヒカリは自分を抑えられなくなった。

「ヒカリ…愛してるよ」

要がそう言いながらヒカリの中に入ってくると
ヒカリはもう何も考えられなくなった。

要に抱かれた後、ヒカリはどうしていいかわからなくなった。

要のことを忘れたはずなのに
思えば身体は全然忘れてなかった。

武志に抱かれる度、毎回要を思い出していた。

目を閉じると要に抱かれてる気持ちなった。

今は目の前に要がいて本当の要に抱かれてしまったのだ。

その現実をヒカリは受け入れられなかった。

「ヒカリ…愛してる。
あれからずっとお前を忘れられない。」

要はそう言って腕の中で震えてるヒカリにキスをした。

「どうしたらいい？
私…武志をどうしよう？
あなたの事もどうしたらいいのかわかんない。

可南子は？可南子にどんな顔して逢ったらいいの？」

ヒカリの頭の中はグチャグチャで
ヒカリはまた後悔する。

―こんなことしなければよかった。―

そしてまた苦しくなる。

「武志と別れたくない？」

「そんなに簡単じゃないよ。」

ヒカリはベッドから起き上がり服を着た。

「ごめんなさい。今日はありがとう。」

店の裏口から帰るヒカリを要は追いかけた。

「待って。また逢えるよな？」

「ごめんなさい。今日はもう…帰らせて。」

ヒカリは何て言っていいかわからずその場を去ろうとした。

要はヒカリを引き留めようと必死に追いかけて腕を掴んで離さなかった。

すると入り口の外に誰かが居るのに気がついた。

「どういうこと？」

そこに立っていたのは可南子だった。

可南子は帰ろうとしたが、裏口の前に止まっていた車が武志のものだと気づいて悪い予感がしてそこで待っていたのだ。

「まさかヒカリだったとは…」

ヒカリは動揺していた。

「可南子、少し話そう。」

要はそう言ったが可南子は聞く耳を持たず
ヒカリの頬を平手打ちした。

「どういうつもり？武志は知ってるの？」

可南子は完全に我を忘れている。

要は可南子の腕を引き

「ちょっと来いよ。」

と店の中に入っていった。

ヒカリは動揺したまま家に帰った。

家から帰ると武志から電話があった。

「ヒカリ？お父さんどう？」

武志の声がやけに優しくてヒカリは自分が情けなくなった。

可南子に叩かれた頬よりも胸があまりにも痛んでその場にうずくまった。