セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
果たして、こんな作戦で男の人が寄って来るものなのか。正直なところ、効果があるとは全くもって思えない私は、渋々会社の外に出ると眩しい陽射しの下、駐車場点検を始めた。
駐車場点検を終わらせ、オフィスへと戻る。自分のデスクに腰をかけた私は、次にどんな隙作りを行うかを考えた。
難波は、私に「この作戦は、地道に周りに知っていってもらう必要がある。やり過ぎは良うないけど、ある程度定期的に行って、お前に隙がある事をアピールしろ」と強く言った。
やり過ぎは良くないけれど、定期的に行う必要があるというこの作戦。私は、次にどんな行動で隙を作るべきかをしばらく考え続けた。そして、考え続けた結果。
「安井さん、これ、リフレッシュルームに落ちてたらしいんですけど、安井さんのですよね?」
「安井、これも給湯室にこれ置きっぱだったけど、安井のやつ?」
「あ、すいません。両方とも私のです。ありがとうございます」
あちこちに私の物だと分かるような忘れ物をした私の元へ、何人もの人がその忘れ物を届けてきてくれた。
「安井、疲れてんのか?」
「安井さん、今日調子悪いんじゃ……」
私に忘れ物を届けに来てくれた人は、皆、口を揃えてそう言うのだけれど……本当にこれで大丈夫なのだろうか。