セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

 そんな私の決意と頑張りが、早くも形となったのか、私は少しずつ男性社員から声をかけられるようになった。まあ、その内容は大体同じようなものだけれど。

「安井さん、最近調子悪いんですか? 松井さんとかが調子悪そうだって言ってましたよ」

「え、あ、ううん。調子悪いわけじゃないんやけど、少しだけうっかりしてた」

 つい最近東京から転勤してきた、営業部所属の爽やかイケメン、早川(ハヤカワ)くん。彼も、私が体調が悪いのではないかというような話を聞いたらしく声をかけてくれた。

「なんか、意外ですね。僕、安井さんは仕事完璧にこなしてらっしゃるイメージしかなかったんで」

「そう? 私、結構そうやって思われがちやねんけど、意外とそうでもないんよ」

「え、本当ですか? なんか、凄く完璧なイメージしかなくて少し遠い存在だったんですけど、ちょっと親近感湧きました」

 白い歯を見せて爽やかに笑った早川くんの栗色の髪がふわりと揺れる。

 ひょっとして、これは本当に安売り大作戦の効果が出てる? 親近感も湧いたって言われてるし、間違いなくこの作戦、上手くいってる……‼︎


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