セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜


「難波、難波!」

「ああ、安井か。嬉しそうな顔して、どないしたん」

 15時過ぎ。リフレッシュルームにて、リフレッシュルームに入ってきたばかりの難波を見つけた私は、私の腰掛けている席に難波を呼び寄せた。

「なあ、難波。あの作戦、びっくりするくらい上手くいってるで」

「おお、そりゃあ良かったわ」

「今日な、3人くらいに話しかけられてんけど、中でも早川くんは好感触やねん」

「早川て、お前、営業部人気ナンバーワンのあの早川か」

「そうそう。かつては人気ナンバーワンやったのに、離婚が原因で今やワーストワンになりつつある難波が数年確立していたナンバーワン」

「その面倒くさい説明いるか? ってか、お前、何回俺の傷えぐんねん」

「あはは、ごめんごめん」

 早川くんは、ここに転勤してきてすぐに女子達の話題になっていた。栗色の髪をセンターで分けていて、無造作に整えられている。おまけに笑顔は爽やかで、優しくて、彼が人気ナンバーワンだというのに誰も異論はないだろう。そのくらい人気な彼だけれど、一応、目の前にいる難波も昔は人気だったのだ。

 離婚をしたことでイメージを落としてしまった難波だけれど、どうして離婚になってしまったのかが分からないくらい、難波はいい奴だ。私は、それをちゃんと知っている。

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