セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
───翌日。
「ちょっと、難波。明日どこ行くんよ」
「だから、教えへんって言うてるやろ」
「なんなんよ。教えへん教えへん、って、そればっかり。それじゃあ、何の作戦するかだけでも教えてよ」
「あかんって。何回聞いても答えへんから。さっさと仕事してこい」
「なんなんよ、もう。難波なんか知らん」
ふん、とそっぽを向いた私は仕方なく難波から離れ、自分のデスクへと腰掛けた。すると、隣の席に腰掛けていた松井ちゃんがイスごとこちらに体を向けた。
「安井さんって、難波さんとめっちゃ仲良いですよね」
「え?」
「私がここに来たときからずっと仲良しじゃないですか。ほら、いつもリフレッシュルームとかでも一緒に話してるし」
「あー、うん。まぁ、同期やしね」
会社に入った時期が同じで、同い年で、ただ単に気が合った。難波とは、それだけの理由でずっと一緒にいたけれど、改めて周りに言われると少しだけ照れくさい感じがした。
私は、松井ちゃんに軽く返事を返し、すぐに仕事に取り掛かかろうとした。だけど、その瞬間、松井ちゃんの口から驚くような言葉が飛び出してきた。
「難波さんって、恋人今いないんですか? ここだけの話、私、難波さんちょっとタイプなんですよ」