セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜
3.柔らかい雰囲気を醸し出す
私なりに、日頃の感謝を難波に返す。そう決めたはずの私は、翌日、早速難波を怒らせてしまった。
「お前なあ、何でこんな日に寝坊なんかしとんねん。ボケ」
難波を怒らせてしまった理由は、私の寝坊。9時に集合だった所を、私は10時過ぎに待ち合わせ場所に着いてしまったのだ。
「ごめん、ごめん、ごめん!本当にごめん!だって昨日、見たいドラマが……」
「あれか。あの、アラサー女子が若いイケメンと社内恋愛するやつか。お前なあ、あんなん見て夢膨らませてんちゃうぞ」
見事、私の見ていたドラマと、私がそのドラマを見て夢を膨らませていたことまで当てて見せた難波。全てを当てられ何も言えなくなってしまった私は、大人しく「ごめんなさい」と言って頭を下げた。
「分かったならええ。ほら、ぼうっとしてんと行くぞ」
「あ、うん」
難波とは、時々、休みの日にも居酒屋で話をしたりする。まぁ、私がいつも呼び出して、私の恋愛話や愚痴を聞いてもらうばかりだけど。
足首辺りまでの黒いパンツに、白いポロシャツ。エナメルのシューズをお洒落に履きこなしている。
ただのパンツも、白いポロシャツも、左腕につけられている時計も。全部が高いものに見えるくらい、何度プライベートで会ったって、難波はお洒落だなあ、と改めて私は感じた。