セールス婚 〜負け組仮確定の私が勝ち組に成り上がるまで〜

 二年前の彼氏も、五年前の彼氏も。みんなそうだった。

 周りより背が高く、スタイルも良い方。ロングストレートの黒髪を下ろし、はっきりとした顔立ちには、ばっちり綺麗めのメイクを施している。そんな私を、元彼は皆口を揃えて「自慢の彼女」と言った。それなのに、どうしてか最後には他の女の子を選んで去って行く。

 私とは正反対の、小柄で、体型も顔立ちも一般的な柔らかい雰囲気をもつ女の子。そんな感じの女の子と、どの彼氏も既に結婚してしまっているのだ。

「前から言うてるやろ。彼女にしたい女と、結婚したい女は別や。自慢の彼女言うてるからって、別に結婚したいと思ってるわけちゃうねん。そういうもんやから。男って」

「なんなん。それじゃあ、私は結婚出来ない女やから結婚諦めろって言うてんの?」

「ちゃうわ。何捻くれとんねん。せやから、結婚したいって思えるような女になれって言うてんやろ」

 ドアホ、と言って目の前から難波の指が伸びてきた。その難波の人差し指の先は、私の額をぺんっと跳ねて戻っていった。

「俺に、いい考えがある」

 帰りに話そうや、と付け足してイスから立ち上がった難波の癖のある黒髪がふわりと揺れる。若干浅黒い肌に、ふにゃんと三日月型になる瞳や口元が、子犬のようだなあ、なんて思った。

 そんな子犬のようだけれど、私よりも頭ひとつ分くらいは背が高いというギャップを持つ難波の背中を送り届けた後、私もリフレッシュルームを後にした。


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